オブザーバビリティツール調査レポート 2025年上期版
調査目的
デジタルトランスフォーメーション(DX)の流れが加速し、多くの企業でクラウド技術の採用が進んでいます。しかしながら、クラウド技術の採用によりシステムは分散・複雑化し、従来の監視手法だけでは全体像を把握することが困難になっています。ビジネスの根幹を支えるシステムの安定稼働と、万一の際の迅速な原因究明は、今や競争優位性を左右する経営課題であり、その解決策として「オブザーバビリティ」の重要性が急速に高まっています。
実際に、今回の調査でも国内企業の7割以上が本番環境のインフラ基盤としてクラウドを利用していることが明らかになりました。その一方で、コンテナやサーバーレスを主流ワークロードとする企業は全体で1/4以下に留まっており 、多くの企業がクラウド移行を経た「過渡期」の段階にあることがうかがえます。こうした状況の中、「多様化する環境に最適なツールは何か?」「導入効果をどう測ればよいのか?」そして「専門知識を持つ人材が不足している」といった課題は、多くの企業にとって共通の悩みとなっています。
Findy Toolsでは、この変化の激しい市場の"リアル"を可視化するため、国内企業のエンジニアなど1,454名を対象にオブザーバビリティツールの利用実態に関する大規模なアンケート調査を実施しました。本記事では、その調査レポートから見えてきた国内市場の最新動向をサマリーとしてお届けします。
調査概要
- 調査目的: オブザーバビリティツールの利用状況に関する調査
- 調査期間: 2025年5月9日~5月16日
- 分析対象回答数: 1,454
※読みやすさの観点で、自由回答については元の意味を変えない程度に表現を変更しています。
※小数点第2位を四捨五入した結果を表示しています。
※回答者が所属する企業タイプはWeb系企業・受託企業など複数あり、回答結果に大きな傾向がある場合を除いて、全て含めた結果を表示しています。
調査目次
1.回答者属性
a.職種分布
b.役職分布
c.業界分布
d.従業員規模・年間売上高分布
2.ツール利用状況
a.本番環境の主要インフラ基盤
b.本番環境の主流ワークロード
c.認知しているオブザーバビリティツール
d.利用中のオブザーバビリティツール
e.ツールごとの認知→利用転換率
f.主要インフラ基盤別の利用ツール
3.ツール活用状況
a.ツールごとの活用領域
b.パブリッククラウドのネイティブツール
c.主要なサードパーティツール
d.ツールの導入効果の指標
e.オブザーバビリティ運用の課題
f.主要なツール別の運用課題
4.終わりに
調査結果サマリ
今回の市場調査「オブザーバビリティツール マーケットレポート 2025年上期版」から、国内企業におけるオブザーバビリティツールの利用実態と市場の最新動向が明らかになりました。企業のシステムインフラはクラウド環境への移行が進み、全体の7割以上がクラウドを利用しています。特にAWSが高いシェアを維持しつつ、AzureやGoogle Cloudも活用されており、オンプレミスやハイブリッド環境も依然として重要な選択肢として併存しています。このようにインフラが多様化する中で、オブザーバビリティツールの選択も柔軟になっています。
従来から高い認知度と利用実績を持つZabbixは、引き続き利用中のツールとしてトップシェアを誇り、特に認知から利用への転換率が非常に高い点が際立っています 。これに加えて、DatadogやSplunkといったSaaS型のプラットフォームも広く普及し、さらにGoogle Cloud環境ではChronosphereのような新しいツールの採用も見られるなど、企業のニーズに応じた多様なツールが選択されています。
一方で、多くの企業ではクラウドネイティブ技術の本格的な活用はこれからの段階です。本番環境のワークロードは依然として物理サーバーや仮想マシンが主流であり、コンテナやサーバーレスへの移行は道半ばと言えるでしょう 。このような状況下において、オブザーバビリティツール導入の効果測定の難しさ、専門知識を持つ人材の不足、そしてツールの運用コスト管理といった課題が共通して認識されており、市場全体のさらなる成熟に向けた取り組みが期待されます。