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【開発生産性カンファレンス 2025】fukabori.fm⁩出張版: 売上高617億円と高稼働率を陰で支えた社内ツール開発のあれこれ話
公開日 更新日

【開発生産性カンファレンス 2025】fukabori.fm⁩出張版: 売上高617億円と高稼働率を陰で支えた社内ツール開発のあれこれ話

2025年7月3、4日に「開発生産性Conference 2025」がファインディ株式会社により開催されました。
4日の「fukabori.fm出張版」セッションでは、株式会社SHIFTの森川 知雄さん、fukabori.fm ホストの岩瀬 義昌さんが登壇し、「急成長する組織のアサイン最適化は“Excelとの共存”がカギだった」と語り合いました。本セッションでは、数千人規模・月180人入社という急拡大を支える社内ツール「ハマツー」の開発プロセスを起点に、Excel管理とのせめぎ合い、稼働率向上の試行錯誤、さらには今後のアサインAIマッチング構想までを深掘りしました。

■プロフィール
森川 知雄/@selen_beginner
株式会社SHIFT
デリバリ改革部サービスプラットフォームグループ グループ長

中堅SIerにて品質管理業務としてテスト戦略から人材育成までを担当。テスト自動化技術Seleniumに出会い、E2Eツールをスクラッチ開発し、コストを最大40%削減。以後、テスト自動化~DevOpsに将来を感じ、2019年に新しい挑戦のできる環境を求めて株式会社SHIFTへ入社。統合型ソフトウェアテスト管理ツール「CAT」やテスト設計支援ツール「TD」、アサイン管理ツール「ハマツー」などを手掛ける開発組織長として、エンジニアマネジメントに日々奔走している。

岩瀬 義昌/@iwashi86
fukabori.fm ホスト

エンジニアに人気のポッドキャスト『fukabori.fm』を運営。 本業では大手通信事業者にて、大規模IP電話システムの開発、内製、アジャイル開発、人事などの業務に従事後、現在はGenerative AI Project の Leader を務める。 その他、『エンジニアのためのドキュメントライティング』『エレガントパズル エンジニアのマネジメントという難問にあなたはどう立ち向かうのか』『エンジニアリングが好きな私たちのための エンジニアリングマネジャー入門』を翻訳。

自社で安定解決できるアサインの実現 - ハマツー開発の背景

岩瀬: 皆さんこんにちは、岩瀬と申します。よろしくお願いします。本日はfukabori.fmの出張版です。ご存じの方、ありがとうございます。いろいろと掘らせていただきたいと思います。いつも通りfukabori.fmらしく進行しますので、森川さん、まずは自己紹介をお願いします。

森川: 森川と申します。株式会社SHIFTから参りました。プロダクト開発やエンジニアリングマネジメント、主に内製開発プロダクトを手掛けています。本日はよろしくお願いします。

岩瀬: ありがとうございます。では本題に入ります。まず前提として、SHIFTさんの事業内容やミッションについて伺ってから深掘りしていきたいと思います。

森川: はい。SHIFTは第三者検証を中心に事業を展開しています。会社は急速に拡大しており、私が入社した5年前は数千人規模でしたが、現在は連結で約1.4万人まで成長しました。テスト事業だけでなく、第三者検証以外の売上が約6割を占めるなど、「日本最後発のSIカンパニー」を掲げています。最後発なので、しっかりとした目標を掲げようということで、多重下請け構造をなくすことを目指しています。
そのためには、「投げない・燃やさない」ように要員のアサインをしていくことが重要だと考えています。
したがって、今回のテーマは、”プライムで受注し自社で安定解決できるアサインを実現すること”にしています。そして、本日お話しするアサインツールは、HYPER ASSIGN MANAGEMENT TOOL(ハマツー)という社内自社開発ツールです。



森川: まず、どんなツールかを数字で示します。弊社では現在、数千人のアサインを常時管理し、案件数は数千件程度を回しています。加えて、月平均180人の新入社員が入社するほど多くの人材が毎月参画しています。組織もセグメントも金融、Web、公共など多数の業界を横断してアサインを一元管理することが、このツールのミッションです。

岩瀬: 月180人はすごいですね。

森川: やばいです。受け入れも大変ですし、アサイン管理ツールは人の管理そのものなので、どんどん入ってくる人の属性を反映するだけでなく、これから入社する未来の情報も入れる必要があります。人が増え続けるため、各社内システムと連携しないと管理が追いつきません。そういった連携を実現したのが今回のツールです。



岩瀬: 森川さんには大体の進行スライドをお渡ししていますが、もう台本から外れようと思います(笑)。毎月180人が入社しているとのことですが、オンボーディングはどうしているんですか?

森川: オンボーディングはものすごくシステマティックです。トレーニングセンターがあり、カリキュラムもがっちり決まっています。ここで、主に業務に合わせたテスト業務などを基本的に対面の講義などでインプットしてもらいますが、何より大事なのは、会社の文化を知ってキャッチアップしてもらうことです。

「敵はExcel」から始まった開発の裏側

岩瀬: では、ここから本題に入っていきます。毎月180人が入社し、数千件もの案件が並行して走る中で、人の割り当てという難しい課題をどうやっているんですか? 何が難しいのでしょうか?

森川: そうですね。タイトルは成功したように見えますが、苦労話がたくさんあります。課題を聞きたいですよね。

岩瀬: はい、お願いします。

森川: 経営から「全社ツールを作って稼働率を上げなさい」というミッションが降ってきました。当時、売上は上がっていましたが営業利益が乖離し始めていたんです。販管費が膨らみ、アサインがうまくいかず、空き要員が出ている。仕事は増えているのに空きが発生するのは、スキルやリソースの割り振りがうまくいっていないからでした。そこで現場で話を聞くと、敵はExcelだということが見えてきました。



岩瀬:「敵はExcel」は今うなずいている方が多かったですね。

森川:10個あるセグメントそれぞれがExcelでアサイン管理をしていたんです。アサインのしきたりはセグメントごとに全く異なり、例えば3年がかりのウォーターフォール案件と、1週間単位のWebテストを回す部署では全く違います。それぞれがExcelで効率よく管理していたため、縦の壁ができていました。私たちはこれを“秘伝のタレExcel”と呼び、何とかしなければならないと考えていました。

岩瀬: 味が染み込みすぎて、もはや何だかわからないタレですね。

森川: 作った本人は「むちゃくちゃおいしい」と思っているんですが、引き継いだ人は大変です。

岩瀬: Excelは無限に何でもできますからね。

森川: そうなんです。中間管理職は自由度を生かしてすごいものを作りますが、下のメンバーはそれに殺されてしまう。「しんどい」という声があり、そこにも最適化が必要でした。

岩瀬: なるほど。ちなみに稼働率など、言える範囲の数字はありますか?

森川: 具体的な数字は出せませんが、90%や80%といった水準です。ただ、0.1%や1%下がるだけでも、数千人規模なので何億円にも響きます。販管費も増えるため、稼働率を上げるという課題は明確でした。

岩瀬: SaaSではないのでNSMのような指標はありませんが、ほぼKGIに近い重要な数字ですね。SHIFTさんはどうExcelと向き合ってきたのか、生々しい話を聞かせてください。

森川: わかりました。Excelとどう戦ってきたかと言うと――戦えはしなかったんです。



岩瀬: 強すぎじゃないですか、ちょっと。

森川: セルバンテスの『ドン・キホーテ』のように、風車をドラゴンだと思っていたんです。でも、相手はドラゴンではなく風車でした。風車はしっかり回っていて、その恩恵を受けている人もいる。壊してはいけないし、そもそも素手では壊せません。だから戦えはしなかったんです。ではどうしたのか。開発フェーズとExcelへの勝ち負けを、私の感情の浮き沈みで感情曲線にしてみました。



岩瀬: 上が勝ちで、下が負けですね?

森川: はい、私の感情の浮き沈みです。アサインツールはフェーズ1、2、3と分かれています。最初にテックリードが3日でプロトタイプを開発し、みんな「Excelを駆逐できる、ドラゴンに勝てる」と思っていました。ところが全社展開のヒアリングを始めると、各セグメントから“秘伝のタレ”のWeb化要望が殺到し、テックリードが泣きながら対応しましたが限界を迎え、どん底に落ち込みました。 ちょうどその頃、「稼働率」というKPIのもとで組織の心が一つになり、最後は勝てたわけではなく「共存」に落ち着きました。WebツールとExcelの両方を使う。ただWebの方が少し入力が速い、といったBIなども活用した歩み寄りです。

岩瀬: デプロイして使い始めて、特に何がダメだったのでしょう?

森川: 最初は技術部門内だけで使っていたのでうまくいきました。スキルマップをもとに、1人月単位でアサインするようなシンプルな世界だったので。しかし、1週間で終わる案件や、日割りアサインが必要な「マイスター」と呼ばれるアルバイト契約の方々が出てくると、途端に複雑になります。

岩瀬: 日割りアサインはやばいですね。

森川: 日割りアサインのUIを作ろうとすると、「この人はこの月とこの月で内容が違います」といった要望や、時短勤務などの個人の属性も考慮する必要が出てきます。それらを吸収するとシステムはどんどん肥大化し、複雑化していきました。

岩瀬: めちゃくちゃ細かいタイムカードみたいな機能が内包されているイメージですか?

森川: それが結局、あまり便利ではなくて。ユーザーに「田中さんは水曜と木曜しか働けません」と登録してもらう必要があり、ユーザーにもストレスがかかる。そのクレームを受けながら開発していくという、互いにペインがある状態でした。

岩瀬: なるほど。フェーズ2の「魔改造的仕様が多発」というのは、Excelの自由差に依存しているからですよね。セルを結合したり外したり、とてもいいツールではあると思うので適材適所にはめれば効果を発揮する。一方で、その魔改造に対応していくとメンテナンスコストで死んでしまうのは課題だと思います。そこらへんの塩梅をどのようにしていったかは、フェーズ2から3で探った感じですか?

森川: そうですね。なるべく要望を取り込みましたが、やはり限界があり、その線引きで結局負けている感じになっていきました。これが下降線のところです。

岩瀬: 振り返って「BIならすぐ作れます」と気づいたのは、どうしてですか?

森川: WebでKPIを追いかける中で、「数字を見たい」という要望が頻繁に出るようになりました。当時、アプリ側でエグゼクティブサマリーのようなビューを作ろうとしても、毎週のように変わる要望に追いつけませんでした。そこでテックリードと相談し、「ビューはBIチームに作ってもらおう。開発チームとBIチームを分けよう」と判断しました。結果、ユーザーは見たい数字を見られ、開発チームも作り過ぎずに済みました。

岩瀬:ビューの部分は、アーキテクチャの考え方でMVC的なところもあると思いますが、ビューを分離してデータを切り分けたのが、ポイントですか?

森川: そうですね。BIといっても、統計分析まで含むものではなく、「ただ数字を見たい」という狭義の意味合いで導入したのが、非常によくハマりました。MVCのビュー層を完全に切り離し、「ビューは新たに開発しません」とテックリードが言い切ったんです。

再現性はどこにあるのか? 稼働率を高めるためのアサイン最適化

岩瀬: ありがとうございます。ここまでは具体的な話でしたが、ここから少し抽象化して伺います。Excelとの闘いなどは、業務によっては直接関係ない方もいると思います。そこで、仮に今回のアサインがうまくいって稼働率があがったときに、「再現性はどこにあるのか」、自分の業務に持ち帰って使えるポイントは何かを聞いてみたいです。

森川: そうですね、かなり抽象的ですが、スライドにまとめました。
「耳は大きく、手は小さく、声は大きく迅速に」が大事だと私は思っています。“耳は大きく”というのは、まず要望をしっかり聞くという意味です。ただし、これはヒアリングであって、必ずしも実装を約束するわけではありません。
手は小さくとはできるところだけ対応し、作り過ぎないようにすること。全てを実装すると、「魔改造アプリ」になり、誰も引き継ぎたがりません。先程の話で、日割りのような特殊なデータはJSONに閉じ込め、基本のデータ構造は壊さないようにしたりしました。
そして、先程の話でビューをわけたりなぜ仕事を分けていくかでいうと、リリースを早くしたいからですね。素早く作り、「できましたよ!」といって利用してもらうためですね。



岩瀬: なるほど、ありがとうございます。もう一つ聞きたいのがGUIテストについてです。なぜGUIテストはだめなんですか?

森川: やはり実行が遅いからです。Playwrightで書いても遅い。それに少し言い訳にはなりますが、社内ツールなので、手元でサッと確認できればOKとしています。実際、画面で致命的なバグはほとんど起きていません。これは、オリジナルコンポーネントを組まず、フレームワーク内で完結させているというフレームワーク選定も影響しています。

岩瀬: なるほど。感想めいたところになりますが、一番下の「しっかりアピール」は最近とても重要だと思っています。特に1万人を超えるような会社では、成果を宣伝しないと全然届きません。アピールで気をつけたことはありますか?

森川: 2つあります。1つは、個別チャットで「あなたのために作りました」と伝えること。もう1つは、定期的にポストすることです。リリースノートを「見に来てください」ではなく、こちらから「届ける」。何が新しくなったかをコンスタントに投げ続ける、社内広報的な活動です。

岩瀬: 社内テックチームの広報は重要ですよね。気をつけないとサボりがちで、やらなくなってしまう。

森川: 面白いことに、一時期そのポストをやめてしまったら、再開したときに「いいね」が付かなくなったんです。継続しないと注目度が下がるんだと痛感しました。

岩瀬: ありがとうございます。一番上のところで、現場の要望を聞く際に、本当のペインを抽出するのは難しいと思うのですが、社員が何に困っているかを聞き出すとき、工夫したことはありますか?

森川: 確かに会議を招集しても本音は出にくいので、喫煙所や雑談スペースでカジュアルにヒアリングする方が効果的でした。担当を分担して「最近どうですか?」と聞き、課題を把握したら改めてミーティングを設定して深掘りしました。

岩瀬:とはいえ、 待ち構えるだけでは難しいと思うのですが、そういった出会いを増やす工夫はありますか?

森川: ヒューマンアプローチに加え、データを活用しました。新機能を出したのに使われていない場合、すぐに関係者へ「使ってください」と交渉に行きました。泥臭いですが、データを見るのが一番早いです。

Excelと共存する - 試行錯誤で得た学び

岩瀬: 今回のプロジェクトでうまくいかなかったことはありますか?

森川: 失敗したところでいうと、日割り機能は一度リリースしたものの、現場の要望とズレていてボタンの掛け違いが多発しました。“秘伝のタレ”を本当の意味で理解できていなかったんです。また、「作れば使ってくれるだろう」という思い込みで普及が進まず、ヒアリングとアンテナの重要性を痛感しました。

岩瀬: 「作れば使ってくれる」は幻想ですよね。プロダクトレッドグロースは本当に難しい。では次の質問です。今回の取り組みで森川さんが「学び」として、得たものは何でしょうか?



森川: いろいろ学びましたが、やはり「Excelに勝とうと思うな」ということです。当初はドラゴンに挑むような気持ちで、武力を上げれば勝てると思っていましたが、到底無理でした。 ただ、勝てないとはいえExcelは業務で非常に使われており、現場も中間管理職も良かれと思って複雑なExcelを作っています。中には横に何メートルにもなるくらいかというほど長いシートもあります。

岩瀬: ウルトラワイドモニターでも足りないくらいですね。

森川: そうなんです。横スクロールが必須のExcelに殺されている人たちがいる。部下はセルをひたすら入力しますが、負荷が高すぎるし、そのためのデータ集めも大変です。ここを救いたいと思いました。 しかし、Excelを倒してはいけない。歩み寄って共存が大切なんです。今回も、いつの間にかWebツールの方を早くいれてくれているんですよ。その後にお手元の“秘伝のタレExcel”が更新されているのを見て、「これでいいんだ」と。倒さず共存する――これが最大の学びでした。

岩瀬: この「Excelに勝とうとしない」というスライドは本当に良いですね。「Excel」を法務、広報、財務といった他のキーワードに置き換えても使えそうです。
では、過去から現在までを振り返りましたので、最後に今後の展望を聞かせていただければと思います。

今後の展望 - アサインAIマッチングツールの活用




まず今回やってみて、冒頭でお話ししたようにHR、アサイン、売上のシステムが繋がり、データがすごく集まってきたことを実感しています。今までは各自がバラバラにExcelへ入力していましたが、それが一つのシステムに集約されました。 そして、先程話した狭義のBIツールのところでも、統計やデータ分析できる基盤ができたよね、という話になり、6000人の人たちのもデータを見せたいよね、となってきたんです。そしてアサインAIマッチングをやりたくなり、すでに社内で走り始めています。

ざっくり説明すると、「引き合い」と呼ばれる情報と、スキルDBやHR管理アプリ「ヒトログ」から取得したリソース情報をマッチングさせるツールです。コンディションや勤務地などの情報をとってきて、最適なアサインをしていく形ですね。

自動運転レベルのイメージで説明すると、レベル0が人の手によるアサインで、今はベクトルDBを使ったセマンティックに検索ができるレベル1くらいです。ただ、まだ「理由付きおみくじ」のような状態です。ここからレベルを上げ、最終的にはアサイン自体が事業戦略に繋がり、「この人材をアサインすればお客様の事業が大きくなる」という提案ができる状態を目指しています。



岩瀬: この場合のデータの持ち方についてですが、スキルDBやヒトログにはどのようなデータを入れているのですか? 例えばスキルレベルを数値で入れていますか?

森川: 今は2種類で、一つは業界経験などの経歴、もう一つは「Pythonができる」のようなスキル軸の情報です。ただ、まだ完全に活用できているわけではなく、このツールでようやく活用しようという段階です。

岩瀬: 少し難しい質問ですが、「Pythonができる」という部分は、どう表現しているのですか?

森川: 一応、7段階でレベル分けしています。Pythonについて登壇できるのが最高レベルで、次が「教えられる」、一番下は「知っている」という感じです。ただ、おっしゃるとおりこれはとても難しく、あくまで参考データで、誰かが正式に評価するものではありません。

岩瀬: もう一点、データは入社時に入力しても、なかなか更新されないと思いますが、更新を促す仕組みはありますか?

森川: 正直に言うと、メンテナンスはまだ十分ではありません。むしろ「データを活用するからメンテナンスしよう」という逆転の発想で、「使うから更新しようぜ」という流れを作ろうとしています。

岩瀬: 確かに「これを入力して何が嬉しいのか」が個人に返ってこないと、モチベーションは続きませんよね。

森川: 少し脱線しますが、アサインデータが取れると「2年前より難しい案件を担当している」といった個人の成長が見え、評価にも繋げることが出来るのでデータ化は本当に大事です。 さらに踏み込むと、私はPMを「鬼将軍」と「仏将軍」と呼んでいます。100人を率いてメンバーがボロボロで帰ってくる将軍と、全員が元気なまま帰ってくる将軍では大きな違いがありますし、データ化すれば、そういったニュアンスでしか分からなかった部分も見えてきます。

岩瀬: 同じプロジェクトでも、メンバーが燃え尽きて帰ってくるのが「鬼将軍」パターン、皆が元気で、なおかつスキルも伸ばして帰ってくるのが「仏将軍」パターンということですね。

森川: そうです。結局、会社としてはバンドエイドを何枚発行するかという話になります。鬼将軍タイプは難しい案件に投入されがちですが、その分ケアも必要になる。鬼将軍が悪いわけではなく、適材適所という戦略の話です。

岩瀬: その点の評価は難しいですね。SHIFTさんが気をつけているところはありますか?

森川: 「ヒトログ」でメンタル状態をデータ化し、ヘルスチェックを行っています。メンタルが低下した人には無理なアサインをしないよう調整しています。ただ、それ自体が“秘伝のタレ”化しているので、今後はAIが情報を伏せつつ「チャレンジングなアサインですが、この人は今メンタル値が低めです。大丈夫ですか?」とサジェストできるようにしたいと考えています。

岩瀬: ありがとうございます。もっと掘り下げたいところですが・・・
最後に森川さんから、今回のお話のまとめのメッセージをお願いします。

DXと言うことの弊害 - 現場に寄り添うということ

森川: 今回は内製開発ツールの外販事例ではなく、社内ツールでも事業貢献できるという点を見ていただけたなら幸いです。 もう一つ、少しエモい話になりますが、「DXと言わない」ことが大事だと学びました。打ち合わせ中に岩瀬さんから「これってDXの話ですよね」と言われ、「確かにそうだけど、僕らは一度もDXという言葉を使っていない」と気づいたんです。現場で“秘伝のタレ”と格闘している人たちに「DXをやります」と言っても反発されます。DXではなく、“現場を楽にするツール”を作ること。これが「クイックに作る/作り過ぎない」というテーマに繋がります。


岩瀬: この「DXと言わない」という言葉は汎用性が高いですね。「DX」を「アジャイル開発最強」のような別のバズワードに置き換えても同じことが言えます。外から新しいアイデアを旗振りすると大きな反発を受けがちで、「自分たちの仕事を改善しましょう」というアプローチの方がはるかに大事です。それを言い換えて「DXやろうぜ」では「何だそれは」となってしまいますから。皆様、ぜひこのスライド使ってください。

森川: 使ってください(笑)。

岩瀬: 時間ぴったりですね。本日はfukabori.fm出張版にお付き合いいただき、ありがとうございました。森川さん、ありがとうございました。

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