Cloudflare R2導入により最小限の工数で大幅なコスト削減を実現した事例
ユニークビジョン株式会社 / 山本一将
テックリード / テックリード / 従業員規模: 51名〜100名 / エンジニア組織: 11名〜50名
ツールの利用規模 | ツールの利用開始時期 | 事業形態 |
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10名以下 | 2024年4月 | B to B |
ツールの利用規模 | 10名以下 |
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ツールの利用開始時期 | 2024年4月 |
事業形態 | B to B |
導入の背景・解決したかった問題
導入背景
ツール導入前の課題
弊社ではSNSマーケティングツール「Belugaシリーズ」を開発・運用しています。そのサービスの一つとして、企業と消費者のより良いブランド体験を創出するSNSキャンペーンを構築・展開できるシステムを提供しています。
提供するサービスの特性上キャンペーンごとに個別のWebサイトの構築を行うことがあり、以下の要件を満たすアーキテクチャが必要でした。
- キャンペーンごとにWebサイトを作成する
- Webサイトの寿命は比較的短く、少ない工数で構築と削除を行う必要がある
- 同時に複数のWebサイトを管理する必要がある
- キャンペーン開始時や告知時など、アクセスが集中することがある
- 動画配信も行う
これらの要件を満たすため、当初はAmazon CloudFront + Amazon S3という構成を採用していました。 しかし、この構成では特にエグレス料金が非常に高額となり、大きな課題となっていました。
どのような状態を目指していたか
突発的なトラフィック増加に耐えられるスケーラビリティやパフォーマンス、複数のキャンペーンサイトを効率よく運用できる状況は維持しつつ、エグレス料金を削減する状態を目指しました。特に、エグレス料金の大部分を占めていた動画配信に着目しました。
現行アーキテクチャからの移行リスクを最小限に抑えつつ最大の効果を得るため、まずは動画配信のみをS3から切り離すことを当面の目標としました。
比較した軸
- コスト(エグレス料金 / ストレージ料金)
- 安定性
- 現行アーキテクチャからの移植の容易さ
選定理由
R2 はエグレス料金が無料で Amazon S3 への高い互換性を持っており、信頼性も Amazon S3 とそん色ないと判断して導入候補として決定しました。
導入の成果
まず、Cloudflare R2の導入により動画配信に関わるエグレス料金を0円にすることができました。これはサービス運用コストの大幅な削減につながりました。 また、AWS SDKを使用して S3 を操作する既存のコードがR2でもほぼそのまま使用できたため、開発工数を最小限に抑えられました。 結果として、少ない労力とリスクで大きな効果を得るという目標を達成しました。
導入時の苦労・悩み
R2 にアップロードしたオブジェクトをパブリックアクセスにするためにカスタムドメインの設定を行うのですが、移行当時はカスタムドメインの設定を行うための API が公開されておらず、手動運用が残る形になってしまいました。
その結果 R2 への完全な移行は実現せず、通常のキャンペーンでは S3 を使用するが大規模なアクセスが見込まれるキャンペーンでは手動でカスタムドメインの設定を行いアクセス先を R2 へ切り替える、という運用をしています。
導入に向けた社内への説明
上長・チームへの説明
そもそもエグレス料金を削減することを課題としてスタートしているので、運用コストや移行コストの見積もりを中心に説明をしました。 また、クラウドサービスの移行という大きな決定であるため、公式ブログのエグレス料金に関するポストや元 AWS で現 Cloudflare エバンジェリストの亀田氏のインタビュー記事を参考に、なぜ Cloudflare はエグレス料金を無料としているのかなどサービスのコンセプトについても整理をしました。
- The Cloudflare Blog,「AWS’s Egregious Egress」
- ASCII.jp,「転職から半年経った亀田さんに聞いたCloudflareのすごいところ」
活用方法
よく使う機能
Cloudflare R2
- キャンペーンサイトを構築するシステムからは S3 API を用いてアクセスします
- アップロードされたオブジェクトはカスタムドメイン機能を使用してパブリックアクセスにしています
- カスタムドメインの設定は R2 ダッシュボード上から手動で設定をしています
ツールの良い点
- エグレス料金無料
- ストレージ料金も安価
- S3 への互換性を持っている
- 機能改善も頻繁に行われている
ツールの課題点
- 公式ドキュメントを含めた、情報量の少なさ
- API が用意されていない管理機能が存在する
- S3 への互換性も完全ではない
- 特に、細かなアクセス制御はまだ行えない状況
ツールを検討されている方へ
Cloudflare はフリープランでも多くの機能を提供しており、検証しやすいのが特徴です。 検討されている場合にはまずは一通り利用してみることをおすすめします。
一見すると必要な機能は揃っているように見えるのですが、カスタムドメインの設定のように細かいところで機能が不足していることもあり、選定時の調査は念入りに行った方が安心感があるかもしれません。
今後の展望
現在は動画配信などエグレス料金への影響が大きい部分のみ移行しましたが、キャンペーンサイト全体の移行や Cloudflare Workers の利用も検討しています。 また、AI Gateway のような大手クラウドサービスでは提供されていない新機能にも注目しており、Cloudflare の利用が広がる可能性は大いにあると考えています。
Cloudflare の今後のサービスの拡大に期待しています。
ユニークビジョン株式会社 / 山本一将
テックリード / テックリード / 従業員規模: 51名〜100名 / エンジニア組織: 11名〜50名
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