開発者が本質業務に集中できる!SentryとAIでエラー対応工数を90%削減し、新機能開発を加速

株式会社クイック / 三上崇
テックリード / テックリード / 従業員規模: 1,001〜5,000名 / エンジニア組織: 11名〜50名
| 利用プラン | 利用機能 | ツールの利用規模 | ツールの利用開始時期 | 事業形態 |
|---|---|---|---|---|
Team Plan | エラー監視機能 | 10名以下 | 2025年6月 | B to C |
| 利用プラン | Team Plan |
|---|---|
| 利用機能 | エラー監視機能 |
| ツールの利用規模 | 10名以下 |
| ツールの利用開始時期 | 2025年6月 |
| 事業形態 | B to C |
アーキテクチャ
アーキテクチャの意図・工夫
今回のアーキテクチャでは、Sentryを単なる「エラー検知ツール」として終わらせず、 「エラー対応プロセス全体の起点(ハブ)」 として位置づけることを意図しました。
普段からNotionをタスク管理に利用している背景があり、エラー発生からタスク起票、そしてその後の対応までをシームレスに行えるフローを目指し、Sentryの情報をNotionへ集約する連携を設計しました。
【具体的な工夫:Sentry → Zapier → Notion連携のエラー対応フロー】
このフローを実現するために、Sentryの 「Internal Integration」 機能(カスタムWebhook)などを活用しています。具体的なエラー対応フローは以下の通りです。
- バックエンド(Laravel)またはフロントエンド(React)でエラーが発生すると、Sentryにエラー情報が送信されます
- Sentryから関係者へSlackに通知されます
- 同時に、SentryのInternal Integrationを使ってエラー情報をZapierに送信します
- Zapierは、受け取ったエラー情報をNotionのフォーマットに合わせて加工し、Notionに用意した「エラーレポート」データベースに自動で起票します
- Notionでは、そのデータベースに組み込まれたAI要約機能を使って、非エンジニアにも説明できるようにエラー内容を自動で要約します
- このNotionのレポートやSentryのエラー情報を確認し、対応が必要と判断したエラーについては、Notion上に用意した「起票」ボタンを押すことで、バグタスクとして起票されます
この仕組みにより、エラー発生からタスク起票、そして報告ドキュメントの作成(NotionのAI要約)までがシームレスに自動化されました。 これにより、エンジニアの調査工数だけでなく、一連の対応業務にかかる時間も大幅に削減できています。
導入の背景・解決したかった問題
導入背景
ツール導入前の課題
Sentry導入前は、 フロントエンドのエラーが検知できず、バックエンドもスタックトレース以外の情報が不足 し、原因特定に多くの時間を要していました。 加えて、 全ての軽微なエラーがSlackに通知され、エンジニア全員の作業を中断させる など、非効率な対応フローが開発の大きな足かせとなっていました。
どのような状態を目指していたか
フロントエンドのエラーを含め、すべてのエラー情報を一元管理できる状態 を目指していました。 エラー発生時には POSTパラメータなどの詳細なコンテキスト情報も容易に確認できる ようにし、原因究明の時間を大幅に短縮したいと考えていました。
また、優先度の低いエラーや既知のエラーにチームが振り回されることなく、 本当に重要なエラーに集中して対応できる体制 を築きたかったです。 そして、集約された豊富な情報を活用し、 AIの力でエラーの原因調査にかかる時間を劇的に削減 することで、開発者が本質的な業務に集中できる環境を実現したかったのです。
比較検討したサービス
- Flare
- Laravel標準のFlareのIgnitionは強力ですが、今回はReact(フロントエンド)を含めた統合的なエラー監視が目的であるため、見送りました。
- Datadog APM
- 主目的がコードレベルのエラー検知であり、パフォーマンス監視(APM)ではないため、見送りました。
比較した軸
1.統合監視の実現
現在、バックエンドのログがOpenSearchに集約されている一方で、フロントエンドのエラー検知ができていない状態でした。そのため、 フロントエンドとバックエンドのエラーをまとめて一元管理し、問題の全体像を把握できる かどうかは最重要視するポイントでした。
2.エラー検知の特化性
パフォーマンス分析についてはインフラ側で導入済みのDatadog APMに任せ、 リアルタイムでのエラー検知と詳細な原因分析 に特化した機能を提供していることを重視しました。
3.情報量と実績
導入後の運用をスムーズにするため、 豊富な導入事例、情報、そして広く採用されている実績 があるかどうかを確認しました。
4.既存ツールとの連携
Slackなどの既存の開発ツールとの連携が容易で、 通知設定のカスタマイズが柔軟にできるか どうかも重要なポイントでした。
選定理由
Sentry導入の決め手となったのは、主に以下の点です。
まず、 フロントエンド(React)とバックエンド(Laravel)の両方のエラーを統合的に監視できる ことでした。これにより、分散していたエラー情報を一元化し、システム全体のエラー状況を把握できるようになります。
さらに、エラー発生時に リクエスト情報(POSTパラメータなど)を含む詳細なコンテキスト情報を豊富に収集できる ため、根本原因の特定が格段に容易になると判断しました。
また、Sentryの優れた機能として、 類似エラーを自動でグルーピングしてくれる 点も大きな決め手となりました。これにより、同一事象のエラー通知に何度も悩まされることなく、本当に対応すべきエラーに集中できると確信しました。
導入の成果
改善したかった課題はどれくらい解決されたか
- フロントエンドのエラー検知
- これまで把握できなかったReactのエラーをリアルタイムで確実に捕捉できるようになりました。
- 情報不足によるデバッグの長期化
- エラー発生時にPOSTパラメータを含む詳細なコンテキスト情報が自動集約され、Seer(Sentryが提供するAIエージェント)の活用により発生直後でおおよその原因がわかる状態となり、原因特定が大幅に高速化しました。
- 通知ノイズの多さ
- 類似エラーの自動グルーピングにより、優先度の低いエラーや同一事象の通知に悩まされることがなくなり、本当に重要なエラーに集中できるようになりました。
どのような成果が得られたか
- 調査の属人性排除と標準化
- Sentryが提供する豊富なコンテキスト情報とSeerによる分析により、 メンバーの調査スキルに依存することなく、誰でも一貫性のある事実に基づいてエラーの原因分析ができる ようになりました。これにより、調査結果のばらつきがなくなり、チーム全体の対応レベルが向上しました。
- エラー対応工数の大幅削減
- エラー発生直後から詳細な情報とAIによる原因推論が得られるため、 エラー調査にかかる時間が劇的に短縮 されました。試算では、エラー対応工数を90%以上削減できる見込みであり、費用対効果は非常に高いものとなりました。
- 開発リソースの最適化
- エラー対応にかかる時間が削減されたことで、その分のリリソースを 新機能開発やサービス改善といった、より本質的な業務に集中して投資 できるようになりました。
- プロダクト品質と開発者体験の向上
- 迅速なエラー検知と修正により、アプリケーションの安定性が向上し、 結果的に顧客体験の改善に貢献できる と考えています。また、非効率なデバッグ作業によるストレスが軽減され、 開発者のモチベーション向上 にも寄与しています。
導入時の苦労・悩み
Sentry導入にあたり、最大の懸念事項は パスワードや個人情報、APIキーといった機密データが、意図せずSentryに送信されてしまうリスクをいかにして防ぐか というセキュリティ上の課題でした。
この課題を解決するため、Sentryが提供する2段階のデータスクラビング機能(SDKによる送信前処理とSentryサーバーによる保存前フィルタリング)を徹底的に検証し、LaravelとReactの両方で実装する必要がありました。
具体的な実装内容やその検証結果については、以下の記事にまとめておりますので、ご興味があればご参照ください。
導入に向けた社内への説明
上長・チームへの説明
Sentry導入の際は、チーム、PJはもちろん、課長、情シス、事業推進部、本部長といった広範囲の関係者に対し、主に以下の2つの論点で説明を行いました。
セキュリティ面について
機密データが外部のSentryサーバーに送信される懸念に対し、 「Sentryの2段階データスクラビング機能(SDKによる送信前マスキングとSentryサーバーでのフィルタリング)を徹底的に活用し、個人情報やAPIキーが漏洩するリスクを排除できる」 ことを説明し、懸念払拭に努めました。
費用対効果について
試算時には月額4,100円の投資で、現在大きな負担となっているエラー調査・対応工数を90%以上削減し、 月間68万円以上のコスト削減が見込める ことを提示しました。 これにより、 開発者が新機能開発といった本質的な業務に集中できる という、費用を大きく上回るメリットを強調しました。 (※補足:試算時はSeerオプションを含んでいなかったが、最終的にSeerも追加したため、2025年11月時点では月額49ドル(約7,500円)程度で利用しています。)
活用方法
- リアルタイム通知
- Slack通知を受け取り、エラー発生を即座に把握。
- 初期調査・判断
- Sentry画面で詳細なエラー情報とSeerによる原因推論を確認し、対応の要否を迅速に判断。
- タスク起票・報告
- Sentry連携でNotionに自動起票されたAI要約済みエラーレポートから、必要に応じてバグタスクを起票・管理。
よく使う機能
1. エラー監視機能
フロントエンドとバックエンドのあらゆるエラーをリアルタイムで検知し、一元的に集約するために利用しています。
2. Issues
自動グルーピングされたエラーの詳細なコンテキスト(スタックトレース、リクエスト情報など)やAI分析結果を確認するために利用しています。
3. Alerts
エラー発生時にSlackやZapierに通知を送るために使用しています。
4. Internal Integrations (カスタムWebhook)
SentryからZapier経由でNotionへエラーレポートを自動起票する連携のために利用しています。
5. Seer
エラーの根本原因推論や解決策の提案をAIに依頼し、調査時間を大幅に削減するために利用しています。
6. Data Scrubbing
個人情報などの機密データがSentryに送信されないよう、SDK側でのマスキングやサーバー側でのフィルタリングを実装するために利用しています。
ツールの良い点
- エラー対応工数の90%以上削減(AI活用)
- メンバー依存しない一貫したエラー分析
- フロント・バックエンド統合監視
- 2段階スクラビングによる強固なデータ保護
- 月額費用を大きく上回る高い費用対効果
- エラー検知からタスク起票・報告まで自動連携
ツールの課題点
- Seerの日本語未対応
ツールを検討されている方へ
エラー対応のAI活用で効率化を
昨今、実装効率を上げるためのAI活用は多岐にわたりますが、エラー対応に特化したAI活用はそこまで多くありません。Sentryが提供するAIエージェントのSeerは、エラー発生直後から根本原因の推論や解決策の提案を行うため、エラー調査にかかる時間を劇的に短縮し、開発効率を大きく向上させることが可能です。
低リスクでの導入が可能
安い費用で始められ、無料のトライアル期間も用意されています。また、2段階のデータスクラビング機能により、個人情報などの機密データ漏洩リスクも排除できるため、セキュリティ面での懸念がある場合でも安心して導入を検討できます。
「見えないコスト」の削減へ
エラー対応にかかる時間やストレスは、開発現場における「見えないコスト」です。Sentryを導入することで、このコストを削減し、開発者が新機能開発やサービス改善といった本質的な業務に集中できる環境を構築できるでしょう。
今後の展望
Sentry導入によるエラー対応の効率化と品質向上という成功体験を活かし、今後は 所属プロジェクト以外の社内全体へのSentryの横断的な導入 を目指します。これにより、全社的にエラー監視と対応プロセスを標準化し、組織全体の開発効率とプロダクト品質の底上げを図っていきたいと考えています。

株式会社クイック / 三上崇
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- 導入の背景・解決したかった問題
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