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【フィジカルAI開発Conference 2026】ハードとクラウドを貫くロボット開発の全貌
公開日 更新日

【フィジカルAI開発Conference 2026】ハードとクラウドを貫くロボット開発の全貌

2026年7月31日、ファインディ株式会社が主催するイベント「フィジカルAI開発Conference 2026 ー ソフトウェアで変わるハードウェアの開発現場」が、コングレスクエア羽田にて開催されました。

本記事では、SEQSENSE株式会社 開発部 ロボソフトチーム チームリーダーの畑尾 直孝さんと、同社 開発部 クラウドチーム サブリーダー(バックエンド担当)の森下 泰光さんによるセッション「ハードとクラウドを貫くロボット開発の全貌」の内容をお届けします。

セッションでは、ロボット単体の開発にとどまらず、クラウドシステムを含めた全体最適のアーキテクチャを独自に構築するSEQSENSEの開発体制が紹介されました。前半は自律移動ロボット「SQ-2」のハードウェアやセンシング技術、警備ロボットとしての役割を、後半はそれを支えるクラウドシステムのアーキテクチャを、それぞれ担当エンジニアが解説。あわせて、次世代機に向けた挑戦と今後の展望が語られました。

■プロフィール
畑尾 直孝
SEQSENSE株式会社
開発部 ロボソフトチーム チームリーダー

2011年、東京大学知能機械情報学専攻博士課程修了。同年、産業技術総合研究所特別研究員。2014年、Google株式会社入社。2018年、SEQSENSE株式会社入社、現在に至る。車輪型移動ロボットの自律移動に関する開発に従事。

森下 泰光
SEQSENSE株式会社
開発部 クラウドチーム サブリーダー(バックエンド担当)

大手メーカーのシステム開発部門でWebアプリケーションの開発に従事した後、VODサービス、メーリングリストサービス、メディアサイトなどの運営会社で自社サービスのWebアプリケーションの開発を経て2022年、SEQSENSE入社。クラウドチームにてロボット管理システムの開発を担当。

誰にも真似できない「企画から量産まで」の自社一貫開発

畑尾:ハードとクラウドを貫くロボット開発の全貌というタイトルで、SEQSENSEより畑尾と森下が発表します。前半はロボソフトチームの畑尾からお話しします。

私はロボソフトチームのリーダーをしています。長らく大学と研究機関でロボットの研究をしていて、前職ではGoogleで二足歩行ロボットの開発を行っていました。そのプロジェクトが終了した後、次のチャレンジとして今の会社SEQSENSEに入社しました。

弊社の設立は10年ほど前で、そこから3年ほどかけて初めてのプロダクトを2019年ごろに発売しました。2024年ごろからは川崎重工さんと共同で病院向けの配送ロボットにも関わっていて、2026年1月からアイリスグループ会社になりました。




弊社最大の特徴は、企画から開発、製造まで全部自社でやっていることです。開発も全て自社でエンジニアを抱えていて、ハードウェア・ロボソフト・クラウドの3チームで開発しています。製造も東京都中央区のオフィス内で組み立てていて、外部依存がなく、判断もスピードも自分たちで決められるのが最大の特徴です。

弊社の主力商品であるSQ-2は、大きさが約120cm、重量は65kgほどで、5〜6時間の稼働時間があり、自動充電の機能もあります。





ライダーが支える自律移動と、「存在による抑止力」

畑尾:頭の上でくるくる回っているのはカメラではなく、ライダーと呼ばれるセンサーです。レーザー光を照射し、それが返ってくるまでの短い時間を計測することで障害物までの距離を測るセンサーで、この部分は弊社の特許技術です。それに加えてカメラが前後左右に4つついているほか、スピーカーとマイクで音声を配信したり人の声を聞き取ったりでき、最新モデルには電光掲示板もついています。

SQ-2の主な機能は巡回と立哨の2つで、巡回は施設内を歩き回って点検や異常検知を行い、立哨は戸口などの一箇所に留まりながら音声や電光掲示板でアナウンスします。

警備ロボットの役割について、よく聞かれる質問として「武器はついているのか」「犯人を追いかけて取り押さえられるのか」というものがありますが、どちらもできません。手も足もついていないので、文字通り手も足も出ません。では警備ロボットの役割は何かというと、存在による抑止力の提供です。ビルをちゃんと管理する意思と能力があることを見せつけることで、悪いことをしようとする人への抑止力を持たせることができると考えています。万引き被疑者への「何があればあきらめたか」というアンケート調査では、カメラやミラーで諦めると答えたのは3%にとどまっており、実際に弊社のロボットもショッピングモールなどで万引きの抑止効果が認められています。

ライダーがくるくる回っている構成にしているのは、死角のない障害物検出をしたいからです。子ども型のマネキンをどんな置き方をしても検出できるという結果を得ています。もう一つのライダーによる機能がSLAMで、ロボットが歩き回りながら自分で地図を作り、その地図の中で今どこにいるかを推定できます。


出荷後も進化し続けるロボットと、次世代機への挑戦

畑尾:弊社は2019年のサービス開始当初から、ロボットを出荷先に置いたまま機能を追加するOTAの仕組みを取り入れていて、出荷後にできることが広がり続けているのが特徴です。例えば2019年当時になかった音声合成によるアナウンス機能や、倒れている人を見つけて警告する機能も、サービス開始後に追加されました。




弊社は2026年1月からアイリスグループに参画しました。アイリスグループは清掃ロボット「JILBY」を内製するスマイルロボティクスを買収済みで、累計7,000社超にロボットを導入している実績のあるロボットメーカーです。弊社は動かす技術を持っていますが、量産して売りさばく能力では会社の規模的に難しく、販売網を持つアイリスグループと技術を持つ弊社が掛け合わされることで、清掃に次ぐ第二の柱として警備ロボット業界を取りに行こうというのが現在の状況です。警備業界は3.5兆円ほどの産業で、半数近くが60歳以上の高齢の方が担っており、それをロボットで代替したいと考えています。

弊社のロボットの最大のネックは価格です。東京都中央区での製造にこだわる限り値段は下げられない一方、海外製のコンペティターには値段で負けてしまいます。そこで、同グループの工場で大量生産する調達力を強化し低コストの構成部品を使うことで、コストを下げながら同等以上の性能を実現するのが目指すゴールです。

そのために、面白い課題にチャレンジしてくれるロボソフトエンジニアを探しています。ロボットやプログラムの経験がある方は多くないと思いますが、未知のことを学ぶ力があれば入ってからでもキャッチアップできます。コストを下げるためには高級な計算機は使えないため、低価格な計算機のリソース制約の中でうまくやる、詰め将棋的な発想が得意な人が向いています。




とはいえエッジでできることには限界があるため、高性能なエッジAIを搭載できない分、エッジの計算資源は自律移動の性能に集中させ、音声認識やLLM、動画からの状況認識といった処理はクラウド上のAIにオフロードしています。先ほどお見せした画面も全てクラウドチームが作った画面で、Webインターフェースやマップ・巡回ルートの管理、ビル管理システムとの外部連携は全てクラウドの役割です。というわけで、ここからはクラウドチームの森下にバトンタッチして、弊社のクラウドシステムの全貌を紹介します。





ロボットとクラウドの両輪で成り立つ警備サービス

森下:クラウドチームの森下です。ここからはクラウドシステムの話をします。まずは開発体制、その後警備ロボットサービスとは何かを整理してから、クラウドの中身について説明します。




弊社の一番の強みは、企画から開発、製造まで全部を自社でやっていることです。サービスの企画に始まり、ハード・ロボソフト・クラウドの3チームで開発し、機体の製造も自社で行っています。外部ベンダーへの依存がなく、判断もスピードも自分たちで握っていて、この体制が開発の柔軟性と速さにつながっています。

警備ロボットサービスとは、従来自らの足で施設内を回っていた警備員の代わりに、自律移動ロボットで施設内を巡回・監視・点検し、警備員は警備室から遠隔で見守るという業務形態へと変革するためのサービスです。人手不足や高齢化が深刻な警備業界を省力化・省人化で支えることが期待されています。優秀なロボットだけでは警備ロボットサービスは成立せず、遠隔監視・多拠点の一元管理・異常検知・ビル設備連携で束ねて警備サービスへと昇華させるクラウドシステムが必要です。

ロボットは3次元センサーで自己位置を把握しながら自律移動し、現場での警備の実務を担います。対してクラウドは状態を管理して遠隔操作し、施設ごとのマップや設定、複数拠点の一元管理を担っています。両者はコマンドを送り状態や映像を受け取る形でつながっており、現場で自律するロボットとそれを遠隔から制御するクラウドシステムの両輪で警備ロボットサービスが成り立っています。




サービス全体の構成は、左がロボット、真ん中がAWS上のクラウドシステム、右側が警備員が使うWebアプリケーションです。ロボット上ではエージェントソフトウェアがAWS IoTを経由してクラウドとやり取りしています。ロボット管理を行うクラウドシステムは、GraphQLのAPIとイベントプロセッサーと呼ぶワーカーサーバーがコアとなっていて、ロボットのカメラ映像を録画・再配信するビデオサーバーや、警備業務を自動実行するスケジュールサーバー、施設のエレベーターとやり取りするエレベーターゲートウェイなどで構成されています。


「画面ではなくロボットが動く」——Web開発とは違うクラウド開発




森下:実際の技術スタックは、ごく普通のモダンなWebアプリケーションと大差ありません。フロントはReactベースでTypeScriptで実装していて、バックエンドはGoを中心にGraphQLやRESTのAPIを作っています。稼働環境はAWSで、全てECS上のDockerコンテナで稼働しています。




一般的なWeb開発と違うところは大きく2つあります。1つ目は、使っているサービスがWebアプリケーション開発ではあまり使われていないものもあるという点で、AWS IoTやKinesis Video Streams、時系列DBのTimestreamなどを使っています。2つ目は非同期の処理が多いということです。一般的なWebアプリケーションではリクエストを送るとすぐレスポンスが返りますが、弊社のAPIはリクエストを投げると「受け付けた」ということだけが返ってきて、実際にロボットが動いた結果やイベント情報は後から遅れて通知されてきます。リクエストを投げると画面も動きはしますが、実際に動いているのはロボットだという点が大きく違います。

ここ2、3年で生成AIが急速に発展してきていて、弊社サービスでもAIを使った機能開発に取り組んでいます。1つ目は変化検知で、前回巡回した結果と今回を比べ、なくなったものや置かれたものを検知します。2つ目は点検業務の自動化で、消火器が所定の位置にあるかを点検する業務の自動化です。3つ目はトイレの場所を聞かれるといった簡単な問い合わせへの自動応答、4つ目は画像解析による侵入者検知で、これらをAIの力でブラッシュアップしていくのが最近の取り組みです。


自社一貫開発が描く、警備ロボットとビル運用の未来

森下:弊社の開発の大きな特徴は、全部自社でやっているところです。それは開発で妥協をしなくていいということだと考えています。現場のニーズをスピーディーに企画化し、要件定義の段階からエンジニアが関わり、UI・API・インフラの設計を進めていきます。機能をどのレイヤーで実現するかも自分たちで完全に選べて、必要ならハードウェアの変更にまで踏み込めます。外部ベンダー待ちもなく、隣の席で相談してその日のうちに開発が動き始めることもよくあります。




物理世界を操作する開発と聞くと身構えるかもしれませんが、使っている技術はWebベースで大きくは変わりません。センサーやハードウェアの複雑さは普段APIの向こう側に隠れているので、あまり意識することはありません。実際に必要になるのは、UIやAPI、インフラやデータの設計ができるWebの地力です。IoTの経験はあるに越したことはありませんが必須ではなく、必要なのは画面の外へ踏み出す好奇心だと思っています。

弊社は新しいステージに立ったばかりです。今年1月にアイリスグループの一員になりましたが、アイリスグループは清掃ロボットを自社で開発・製造・販売までできるロボットメーカーでもあり、すでに大きな清掃ロボットのシェアを持っています。2026年7月に発売開始した「JILBY」という新しいロボット掃除機もその一つです。アイリスグループの高い製造力と私たちの開発力をかけ合わせ、警備ロボット市場を大きく広げていこうと考えています。グループの中でクラウド開発の実績を一番持っているのは弊社なので、グループ全体を牽引していくチームとしてさらに拡大していきたいと思っています。




今後私たちが目指すのは、警備・清掃という枠を超えていくことです。警備、清掃、配送、点検、設備管理と、ビルの中のあらゆるロボットと設備を、他社製も弊社製も含めて一つのクラウド基盤で束ねて管理し、ビルの運用・運営そのものをプラットフォーム化する、そうした絵を描いて日々開発を進めています。弊社は「世界を変えない」というミッションを掲げていますが、それは「人口が減っても安全で便利な毎日を変えずに続けられる社会をロボットの技術で支えたい」という意志を表しています。




最後に商業稼働している施設をいくつか紹介します。東京駅の大丸東京店、東京国際フォーラム、東京・京橋のTODA BUILDING、東京・港区の虎ノ門ヒルズステーションタワー、新宿の東京都庁第二本庁舎などがあり、一般の人が行き交う場所でSQ-2が働く様子を見ることができます。




以上で弊社からの発表を終わります。どうもありがとうございました。

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