Amazon Bedrock活用で実現!検索精度向上と2.6%売上アップの舞台裏
株式会社オズビジョン / 天野勇弥
メンバー / フロントエンドエンジニア / 従業員規模: 51名〜100名 / エンジニア組織: 11名〜50名
アーキテクチャ

アーキテクチャの意図・工夫
はじめに
今回のプロジェクトは、ユーザー数560万人*、年間流通総額1,678億円*を誇るポイントプラットフォーム「ハピタス」の広告検索において、検索精度およびユーザー体験の向上を目的とした最新の生成AIモデルを活用した取り組みです。(*2025年3月末時点)
導入前は、ユーザーが検索したキーワードと無関係な広告が上位表示されるなどの課題がありましたが、Amazon Titan Text Embeddings v2の採用によって検索結果の精度が向上し、売上も2.6%増加しました。
アーキテクチャ面では、安価かつ最新機能を利用できるバージニアリージョンの選定や、ベクトルDBとしてAmazon Aurora Serverless v2を活用しコストを抑制しました。
リージョン選定の背景
- 既存環境:東京リージョン
- 新環境:バージニアリージョン
- 理由
- 新しい生成AIモデルをいち早く試せる
- 東京リージョンより安価
- 想定レイテンシ(約0.3秒)が許容範囲内
- 理由
レイテンシ比較
検索種別 | 通信レイテンシ | ブラウザ応答時間 | 内訳 |
---|---|---|---|
既存検索 | 0秒 | 約1.3秒 | – |
ベクトル検索 | 約0.3秒 | 約2.5秒 | ・API処理:1.8秒 ・Webサーバ処理:0.4秒 |
ベクトルDB選定
- 採用:Amazon Aurora Serverless v2 (PostgreSQL)
- 理由:OpenSearchより運用コストを抑制できるため
登録処理基盤の選択
- 採用:Amazon ECS(バッチ)
- 理由:AWS Lambdaは最大実行時間15分の制約があるが、本処理は30分以上必要なため
システム分離と開発言語
- API Gateway 経由の理由
- 既存のバッチ/Webサーバーに過度な責務を持たせない
- 実装言語:Python
- 機械学習ライブラリが豊富なため、新環境ではPythonでベクトルDB更新
Embedding モデル選定
- 採用:Amazon Titan Text Embeddings v2(2024/4/30 リリース)
- 理由:
- 当社ユースケースで Cohere Embed Model v3 と結果差がほぼなし
- コストが1/5と大幅に安価
- バージニアリージョンで最新機能をいち早く利用可能
導入の背景・解決したかった問題
導入背景
ツール導入前の課題
広告検索における課題
「ハピタス」には数多くの広告が掲載されていますが、検索ワードによってはユーザーにとって望ましい広告が表示されにくいという課題がありました。
例えば、「ANA」と検索した場合、「Panasonic」が上位に表示されてしまうケースです。
加えて、特定の広告を検索する「指名検索」がほとんどを占め、関連度の高い広告を表示させづらい状況がありました。
どのような状態を目指していたか
キーワード検索の検索結果をより「ユーザーアクションに繋がる」と考えられるものに改善し、検索利用者のCVRを向上させる状態
比較検討したサービス
Cohere Embed Model v3
比較した軸
性能面とコストのバランス
選定理由
性能を維持しつつ費用を削減できるため、Amazon Titan Text Embeddings v2 を採用
導入の成果
改善したかった課題はどれくらい解決されたか
「ANA」で検索した際に「Panasonic」関連の広告がヒットしづらくなり、ページの下の方に表示されるようになるなど、キーワード検索の精度が向上。
どのような成果が得られたか
キーワード検索の精度向上に留まらず、ユーザーアクション及び売り上げ向上に繋がる検索結果の表示改善。 ABテストの結果、従来の検索と比較して2.6%の売り上げ増を実現。(2025年3月月間の実績値)
導入時の苦労・悩み
自社プロダクトへの導入にあたり、アーキテクチャ設計やコスト試算で多くの課題がありましたが、AWS のサポートを受けることでスムーズに開発を進めることができました。
導入に向けた社内への説明
上長・チームへの説明
AWS主催の「生成AI活用開始プログラム」へ開発メンバーだけでなく関係各部署のキーマンも参加してもらい、生成AIによって解決可能な課題の全体像を共有したことで、上長やチームからスムーズに導入への理解を得ることができました。
活用方法
よく使う機能
セマンティックサーチ(“おすすめ(ベータ)”モード)
検索窓のプルダウンで「おすすめ(ベータ)」を選択すると、Amazon Bedrock と Aurora PostgreSQL を組み合わせたベクトル検索を実行し、曖昧なワードでも関連度の高い広告を返します。ベクトル埋め込み生成
- 登録時:ECS(Fargate)が S3 の CSV を読み込み、Amazon Bedrock(Titan Text Embeddings v2)で広告データの埋め込みを一括生成
- 検索時:AWS Lambda から Bedrock を呼び出し、検索ワードをベクトル化
ツールの良い点
検索体験の向上:ユーザーの期待に近い検索結果の提供
ツールの課題点
- ベクトル検索に関する専門的な知見が必要
- モデルの埋め込み品質を維持するため、定期的なチューニングが必須
- 運用中の精度評価と継続的な見直しが欠かせない
今後の展望
- 検索機能以外の業務領域への展開を検討
- 社内ドキュメントの検索・整理
- 開発支援(例:Anthropic Claudeを活用した開発コード生成・レビュー)
株式会社オズビジョン / 天野勇弥
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目次
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- 導入の背景・解決したかった問題
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