【リプレイス作業の工数40%削減を実現】AIツール『Cline』導入の実践レポート
株式会社 鈴木商店 / 和田光貴
メンバー / フロントエンドエンジニア / 従業員規模: 11名〜50名 / エンジニア組織: 11名〜50名
| ツールの利用規模 | ツールの利用開始時期 | 事業形態 |
|---|---|---|
| 10名以下 | 2025年4月 | B to B |
| ツールの利用規模 | 10名以下 |
|---|---|
| ツールの利用開始時期 | 2025年4月 |
| 事業形態 | B to B |
導入の背景・解決したかった問題
導入背景
ツール導入前の課題
当社のあるプロジェクトで、レガシーシステムからReactへのフロントエンド移行作業において、開発工数が肥大化する課題を抱えていました。
主要課題:開発工数の増大
以下の要因により、想定以上の工数が必要となっていました。
API統合の複雑性による作業負荷
- 2画面で約40個のAPIエンドポイントの管理が必要
- 各APIレスポンスに平均20〜30個のプロパティ(最大約100個)
- これらすべてに対する型定義を手動で作成する必要があり、膨大な作業時間が発生
- 未使用プロパティの混在により、さらに作業が複雑化
繰り返し作業による非効率性
- 類似パターンのコンポーネントを都度実装
- テストコードの基本構造を毎回作成
- 定型的な処理の重複実装
品質担保のための追加工数
- 手動実装によるヒューマンエラーの修正時間
- レビューと修正のサイクルの長期化
導入により実現したい目標
開発工数の削減を最優先課題として、以下の改善を目指しました。
型定義作成の自動化
- 40個以上のAPI × 平均20〜30個のプロパティという膨大な型定義作業を自動化
- APIレスポンス(json)から直接TypeScript型を生成し、手動作業を排除
定型作業の効率化
- 類似コンポーネントのテンプレート化と自動生成
- 繰り返しパターンの自動実装による作業時間短縮
テスト実装の高速化
- テストコードの基本構造を自動生成
- 初期実装時間を大幅に削減
これらの課題解決により、開発生産性の向上と品質の安定化を目標としていました。
比較検討したサービス
導入検討時点では、AIエージェントツールは市場に登場し始めたばかりの段階でした。当時利用可能だった選択肢は限定的で、GitHub Copilotのコード補完機能が主流となっている状況でした。
そのため、本格的な比較検討は実施せず、以下の観点からClineの導入を決定しました。
導入の成果
改善したかった課題の解決度
当初の課題に対して、以下の改善を実現しました。
- 開発工数の増大:従来手法の想定見積もり工数と比較して40%の削減を達成
- API統合の複雑性:型定義の自動生成により作業時間を約15倍高速化
- 品質の安定性:テンプレート活用による実装の標準化を実現
どのような成果が得られたか
開発工数を約40%削減できたことが最大の成果です。事前の見積もりと実績を比較し、具体的な効果を測定しました。
事前見積もり(従来手法の場合)
- (概算)想定工数:約50日
- 主な作業:手動での型定義作成、コンポーネント実装、テストコード作成
実際の結果(
cline活用)- 実績工数:約30日で完了
- 差分:約20日短縮(40%の効率化)
何がこの差を生んだのか?
最も効果が大きかった作業は以下の3点です。
- 型定義の自動生成(APIレスポンスからTypeScript型への変換)
- 40個以上のAPIに対する型定義作成時間を大幅短縮
- 定型的なコンポーネントの効率的な生成
- 類似パターンの実装時間を約6分の1に短縮
- テストコード基盤の迅速な構築
- テンプレート生成により初期実装時間を削減
⚠︎成果に関する留意事項
20日の工数削減には、Cline以外の要因も含まれています。
- その他の改善要因
- プロジェクトの習熟度向上
- 既存コードパターンの蓄積と再利用
- 共通コンポーネントの活用
また、工数見積もりの甘さも起因してる可能性がありますが、 これらの複合的な要因を考慮しても、Clineが生産性向上の主要な要因であったことは明確です。
導入に向けた社内への説明
上長・チームへの説明
弊社はAIの活用に積極的な文化があるため、導入における大きな障壁はありませんでした。
AI導入に対する組織の理解があったことで、検証から本格導入まで迅速に進めることができました。結果として、提案から導入までの期間を最小限に抑え、早期に効果を実現することが可能となりました。
活用方法
現在はClineとの互換性も高く、より精度の高いコード生成が可能なClaude Codeに移行して同様の使い方で活用しています。
- 実装面
- 型定義の自動生成
- 定型的なコンポーネントの大量生成
- テストコードのひな形作成
- 設計面
- 実装参考ファイルを提示して、設計ルールに沿ったコードを生成
よく使う機能
- AIエージェント機能
- プロジェクト全体のコンテキストを理解した上での自動実装
- 複数ファイルにまたがる一貫した変更の実行
- チャット形式での対話的な開発(要件を伝えるだけで実装の叩きまで完了)
ツールの良い点
開発工数の大幅削減
- 実際のプロジェクトで40%の工数削減を実現
- 特に定型的な作業において顕著な効果
- 型定義作成:約15倍の効率化(30分→2分)
- コンポーネント生成:約6倍の効率化(30分→5分)
- テストコード作成:約6倍の効率化(30分→5分)
スムーズな導入が可能な理由
- VSCode拡張機能として提供されるため、既存の開発環境にそのまま統合
- GitHub Copilot利用企業の場合、同じAIプロバイダー(OpenAI/Anthropic)を選択可能
- 追加のインフラ構築や複雑な設定が不要
- 学習コストが低く、即日から利用開始可能
現行の開発フローを変更することなく導入
- チーム内での段階的な展開が可能
- 既存のコードレビュープロセスにそのまま組み込み可能
ツールの課題点
参考実装がない場合、生成ファイルの品質が不安定性
- 参照ファイルを提示できない新規機能などでは、AIが独自の判断でコードを生成
- チームの開発規約や設計思想から逸脱したコードが生成されるリスク
- 「動作すること」を優先し、保守性や拡張性が考慮されない傾向
- 対策
- .clinerules ファイルでプロジェクト固有のルールを明文化
- 参考実装を必ず提示する運用ルールの徹底
- 生成後の必須レビュープロセスの確立
アーキテクチャ設計への理解不足
- レイヤー間の責務分離が不適切(ビジネスロジックがView層に混在など)
- 単一のhooksに機能を詰め込みすぎる傾向
- 長期的な保守性よりも即時的な実装を優先
現在の改善状況 2024年11月時点では、Claude CodeやCodexなどの新世代ツールがこの課題に対して改善を見せています。これらのツールは、プロジェクト全体の設計パターンをより深く理解し、適切なアーキテクチャに沿った実装を提案する能力が向上しています。
ツール選定時は、単純なコード生成能力だけでなく、設計理解力も重要な評価軸として検討することを推奨します。
ツールを検討されている方へ
まずは小規模なプロジェクトで試験導入し、効果を測定することをお勧めします。 その後、チーム全体でツールの使い方やベストプラクティスを共有することが重要です。生成されたコードのレビュー体制を整え、最後は、必ず人の目で品質を確保することも忘れずに行いましょう
今後の展望
技術の進化は非常に速く、現在ではCline以外にも優れた選択肢が存在します。現在私が主に活用しているのは、Claude CodeとCodexです。これらのツールは、Clineの経験を活かしながら、より高度な機能を提供しています。 ツール選定の際は、最新の情報を確認し、自社の開発環境や要件に最適なものを選択することが重要です。
株式会社 鈴木商店 / 和田光貴
メンバー / フロントエンドエンジニア / 従業員規模: 11名〜50名 / エンジニア組織: 11名〜50名
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