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【内製開発Summit 2025】パナソニック コネクトのアジャイルジャーニー
公開日 更新日

【内製開発Summit 2025】パナソニック コネクトのアジャイルジャーニー

2025年2月27日、ファインディ株式会社が主催するイベント「内製開発Summit 2025」が、野村コンファレンスプラザ日本橋にて開催されました。

本記事では、パナソニック コネクト株式会社 執行役員 シニア・ヴァイス・プレジデント , チーフ・テクノロジー・オフィサー(CTO) を務める榊原 彰さんによるセッション「パナソニック コネクトのアジャイルジャーニー」の内容をお届けします。

パナソニックコネクト株式会社では、研究開発本部を中心にソフトウェア開発の内製化とアジャイル開発への移行を急ピッチで進めています。この挑戦にレバレッジを利かせているのが、同社が2021年に買収を完了したサプライチェーンマネジメントのSaaS大手ベンダーである米Blue Yonderの存在です。当セッションでは、Blue Yonderと研究開発チームがどのようにアジャイルの内製開発を進めているのか、そのジャーニーについて過去の経緯・Blue Yonderのテクノロジーも含めて詳細についてお話しいただきました。



■プロフィール
榊原 彰
パナソニック コネクト株式会社 執行役員 シニア・ヴァイス・プレジデント , チーフ・テクノロジー・オフィサー(CTO)
1986年日本アイ・ビー・エム(株)入社。2016年日本マイクロソフト(株)執行役員CTO。2018年からマイクロソフトディベロップメント(株)代表取締役社長も兼務。2021年11月パナソニックに入社し現在に至る。現在はBlue Yonderとのシナジー効果を出すべく研究開発をリードしている。

アジャイル転換の途上にあるパナソニック コネクト

榊原:皆さんこんばんは。こんなに多数の皆さんにご参加いただきまして誠にありがとうございます。

皆さんのご期待に添えるように頑張りますので、よろしくお願いいたします。今日は、「パナソニックコネクトのアジャイルジャーニー」というタイトルでお話しさせてください。

私たちのジャーニーはまだ旅の途中ではありますが、本日は現時点までの進捗についてご報告させていただこうと思っております。プロフェッショナルの方々には物足りなく感じられる部分もあるかもしれませんが、ご容赦いただければ幸いです。

それでは最初に会社の概要をご紹介させてください。パナソニックコネクトは、Panasonicグループの事業会社の一つです。パナソニックグループは2022年4月からホールディングス制度を採用しており、グループ構造はホールディングスの下に7つの事業会社と1つの社内向けシェアリングサービス会社が配置されています。これらの事業会社は規模にばらつきはあるものの、概ね1兆円前後の売上規模を有しています。




構造上の特徴として、ホールディングス内にパナソニック株式会社が存在しています。この点は一般の方々にはまだ十分理解されていない部分です。最近、グループCEO楠見より、パナソニック株式会社傘下の社内カンパニーを独立させ、パナソニック株式会社自体を廃止するという発表がありました。これについて「パナソニック解体」という憶測がSNSで広がりましたが、実際には事業体の構造変更を意味するものです。

パナソニックコネクトは、一般的にPanasonicと聞くと想起される家電製品は扱っていません。BtoBビジネスに特化し、ハードウェアおよびソフトウェアの両事業を展開しています。売上高は約1兆2,000億円、従業員数はグローバルで約27,000人を擁する企業になります。

ハードウェアからソフトウェアへ シフトするパナソニックの成長戦略

次に事業戦略を簡潔にご説明します。当社のハードウェア系ビジネスは、多くのハードウェアビジネスと同様に、市場が急激に成長する性質のものではありません。当社は4種類(より詳細には5種類)のハードウェア事業を展開しています。



アビオニクスは、航空機内のエンターテインメントシステム、機内ネットワークシステム、衛星接続Wi-Fiシステムなどを扱う事業です。

メディアエンターテイメントは、大型プロジェクションシステムやプロジェクターを扱っています。大型アミューズメント施設で使用される高性能プロジェクター(1台1,000万円クラス)などを提供しています。

プロセスオートメーション部門は、回路形成と溶接の2分野に特化しています。半導体基板にチップを実装するマウントマシーン(サーフェスマウントマシーン)と、レーザー溶接ロボットを扱っています。

モバイルソリューションズでは、レッツノートPC、アメリカ市場向けのタフブック(耐衝撃・耐振動・耐熱性に優れた頑丈なPC)、また小売店で使用される決済端末などを提供しています。

これらは過去数年にわたって、収益性の高い事業や世界市場で支配的シェアを持つ製品のみを残す形でポートフォリオを整理してきました。つまり、市場の大幅な成長は見込めないものの、安定した収益を生み出す事業(いわゆるキャッシュカウ)のみを維持し、そこから得られる収益を成長率の高いソフトウェア事業へ投資するという基本戦略を採用しています。

研究開発からSaaSビジネスまで一気通貫の組織設計

成長事業としては、Blue Yonderというサプライチェーンのクラウドベンダー(米国企業)を3年前に買収しました。それ以前にZetes(欧州のサプライチェーン関連企業)も買収しています。現場ソリューションカンパニーは、当社コネクト内の社内カンパニーであり、システムインテグレーション事業を展開しています。

Blue YonderやZetesの下に記載されているのは、我々による買収後に彼らが買収した企業です。Blue YonderはOne Network Enterprise、Flexis、Doddle、ZetesはRobotizeを買収しています。こうした分野に資本を投下し、成長サイクルを構築するのが基本戦略です。

コネクト組織内には、上記の事業に加え、技術研究開発本部、技術戦略室、クラウドエンジニアリングセンター、SaaSビジネスユニットがあり、これら4組織を私が統括しています。



技術戦略室が事業戦略策定や計画立案を担当する一方、実働部隊としては研究開発本部、クラウドエンジニアングセンター、SaaSビジネスユニットがあります。

この組織構成を「テクノロジープロダクトライン」と呼んでいます。研究開発本部で開発された新技術を、クラウドエンジニアリングセンターが構築したスケーラブルなクラウドインフラ上に実装し、SaaSビジネスユニットから事業として展開するという一連の流れを確立しようと努めています。



それまでは技術研究開発本部の主な使命は各事業本部への貢献でしたが、テクノロジープロダクトライン構築後は、5年先、10年先のパナソニックコネクトの基幹となる事業の探索や新規事業開発にフォーカスを絞りました。

世界最大級サプライチェーンSaaS企業、Blue Yonderとの統合

当社の本社は東京の浜離宮(電通本社ビルの向かい)にありますが、研究開発拠点は国内3箇所に分散しています。横浜の佐江戸地区(横浜線鴨井駅近く、ららポート周辺)、大阪の京橋(旧読売テレビビル跡地)、そして福岡の美野島です。

海外ではBlue Yonderがアメリカに拠点を置いています。Blue Yonderの本社はアリゾナ州スコッツデールですが、最大の研究開発拠点はダラスにあります。また、ヨーロッパにもドイツを中心とした拠点網があります。さらに、ベトナムとシンガポールとも緊密に連携し、日常的な開発活動を共同で進めています。



Blue Yonderは、サプライチェーンマネジメントのクラウドソリューション専業ベンダーとしては世界最大規模を誇ります。サプライチェーンとは、原材料調達から加工・組立、物流、販売、返品回収に至る一連の流れを指し、Blue Yonderはこの全プロセスをカバーするソリューションを提供する数少ない企業の一つです。

従来はオンプレミスソリューションが主体でしたが、現在はSaaSへと急速に移行しており、SaaS部門は顕著な成長を遂げています。グローバルでの顧客数は3,000社を超え、フォーチュン100企業の多くがBlue Yonderのソリューションを活用しています。



現場データとクラウド計画を融合する自律型サプライチェーンの構想

私たちとBlue Yonderとの重要な共通目標の一つが「オートノマス(自律的)サプライチェーンマネジメント」の構築です。Blue Yonderが提供するクラウドソリューションは、適切なデータ入力がなければ十分に機能しません。

そこで、現場の状況をリアルタイムに把握し、それに応じて計画を自律的に調整できるサプライチェーンシステムの構築を目指しています。


Blue Yonderがクラウドソリューションを提供する一方、当社は従来からIoTやエッジコンピューティングに強みを持つメーカーです。現場の状況を把握するための様々なセンシング技術(画像分析、ミリ波レーダー、ライダー、V-SLAMなど)を保有しています。また、収集したデータを解釈するための生成AI、オントロジー、ナレッジグラフなどのAIソリューションも開発しています。

さらに、様々な状況をシミュレーションする技術も当社の強みです。元々はレッツノートなどの物理設計シミュレーション技術を持っていましたが、現在では離散系シミュレーション(例:倉庫内の最適な荷物配置など)へと応用分野を拡大しています。

これら現場の状況をデジタル空間に再現するデジタルツイン技術、分析結果を現場にフィードバックするロボティクス技術がCPSループ(サイバーフィジカルシステムループ)として機能しています。このループとBlue Yonderの需要予測、生産計画、在庫管理などの計画系システムを連携させ、環境変化に柔軟に対応できるシステムの構築を進めています。

60のユースケースから絞り込んだ3つの戦略ソリューション

Blue Yonderとは、北米の20社以上の顧客にヒアリングを実施し、どのようなソリューションが必要とされているかを調査した結果、約60のユースケースをリストアップしました。

これらを分類・整理した結果、現在注力しているのは以下の3分野です。
1.「Intelligent Store」:店舗運営の高度化
2.「Digital Warehouse」:倉庫のデジタル化
3.「Connected Logistics」:物流のクラウド連携による最適化

これらの分野において様々なユースケースを開発しており、これらを「Blue Yonderとのジョイントソリューション」と位置づけています。



しかし、Blue Yonder買収直後、パナソニックのソフトウェア開発能力がBlue Yonderのレベルに達していないという課題が明らかになりました。この差を埋めるため、ソフトウェア開発力の強化が急務となりました。

パナソニックのソフトウェア開発の歴史を振り返ると、1990年代のハードウェア全盛期においては、ソフトウェアはハードウェアを動作させるための「組み込みソフト」として位置づけられていました。ハードウェアが主体であったため、品質管理の仕組みもすべてハードウェア中心に構築されていました。



インターネットの普及に伴い、ハードウェア販売促進のためのプロモーションソフトウェアも開発されるようになりました。例えば、ウェブサイトで登録することで携帯端末の機能が拡張されるといったサービスです。この時期のプロセスはウォーターフォール型を基本とし、CMMIなどを導入して成熟度向上を図る取り組みが行われていました。

スマートフォンの台頭とクラウドの普及により、ハードウェアのコモディティ化が進み、汎用製品にソフトウェアで付加価値を創出する時代へと移行しました。市場変化のスピードも加速し、従来の固定的な開発ルールでは対応できなくなってきました。これはパナソニック特有の課題ではなく、多くの製造業が直面した共通課題です。

この状況下で「ルールの形骸化」という問題が生じました。ルールの本来の目的や意義が理解されないまま、形式的にルールに従う文化が形成されていたのです。私自身、入社から3年経った今でも、こうした合理性を欠いたルールとの対峙を続けています。

アジャイルは単なる「迅速な開発手法」ではなく、ビジネスサイクル全体をアジャイルに変革する必要があります。Blue Yonderのプロセスは、ユースケースの創出から始まり、優先順位付け、ビジネスモデルの可視化、実現可否の検討、概念実証(POC)の実施、そして顧客価値の検証を経てリリースに至るサイクルで構成されています。

このプロセス内でアジャイル開発手法を活用し、迅速な開発サイクルを回すことが重要ですが、この流れに追いつけないことが私たちのアジャイルジャーニーの出発点となりました。



製造業からSaaSへの転換と開発文化の衝突

私が入社したのは2021年11月です。Blue Yonderの買収は同年5月頃に発表され、その頃から社内でBlue Yonderのアジャイル開発についての勉強会が開催されていました。Blue Yonderへのヒアリングを通じて様々なプロセスを試行錯誤していた段階でした。

私の入社直後からジョイントソリューション開発を開始しましたが、学んだ知識を実際の開発に適用しようとすると、多くの課題に直面しました。試行錯誤を続け、2023年には外部コンサルタントの支援も得て、様々な気づきを得ながら現在に至っています。



アジャイルを理解するために、Blue Yonderのチーフクオリティオフィサーに開発プロセスの理由や品質保証方法、プロジェクト管理手法などについてヒアリングしました。

しかし、得られた情報を「多くのタスクを実施する必要がある」と解釈し、過剰な作業を設定してしまうなどの癖がなかなか抜けませんでした。



パナソニックの品質標準は主にExcel表形式で記述されていましたが、これは回収コストが莫大なハードウェア製品を前提に策定されたものであり、クラウドやリーン・アジャイル開発には適していませんでした。このような基準に基づくと、「これもあれも実施しなければならない」という発想に陥ってしまいます。

巨大物流拠点2平方キロの全貌を把握する技術的挑戦

そこでやり方を少し変えてみました。「インセプションデッキ」というものを作ることで、チームメンバー間のイメージ共有がスムーズになりました。

また、リクエストボードを活用して改善活動を推進し、JiraやConfluenceを導入して可視化を進めました。Blue Yonderの当時のツールマッピングを参考に、自動化や効率化を図りました。ダッシュボードも作成し、チームメンバーの意識向上にも寄与しました。



しかし、開発チームが自分たちの興味のある機能に注力しがちになったり、チーム規模の拡大に伴いチーム間連携が複雑化すると、プロジェクト全体の進行が停滞する事態が発生しました。

具体例として、Blue Yonderとのジョイントソリューションの一環である「Yard Gate Management」と「Yard Trailer Management」が挙げられます。これらは物流拠点のバックヤード管理システムですが、実際の規模は想像を超えるものでした。

2平方キロメートルにも及ぶエリアで、大型コンテナを積載したトラックが2,000台も出入りするような巨大物流拠点において、各トラックの積載コンテナ、入場時間、荷物の搬入・搬出場所、積み替え作業、出発時間、目的地到着予定時間などを一元管理する必要がありました。



さらに技術的な課題も存在しました。GPSの活用も検討されましたが、トラック運転手がGPS機器を紛失するケースが多いことや、施設内の電波状況が不安定で十分な精度が確保できないという問題がありました。このような環境下でトラックやコンテナの状態を正確に把握する方法の確立が、これらのユースケースの核心でした。

このような複雑なプロジェクトでは、必然的に複数チームの連携が必要でしたが、チーム間での優先順位の不一致や連携不足により、開発プロセス全体に支障をきたす状況が生じていました。

外部コーチングがもたらした変革の転機

そこで課題解決のため外部コーチングを導入しました。コーチからの最初の指摘は「よくこれだけ多くの資料を作成して進めてこられましたね」というものでした。

短期間ながら半年以上にわたり、ティーチング、コーチング、最終確認というステップで伴走支援を受け、ノウハウを吸収していきました。




コーチから見た当初の課題は、特に参加人数の多さでした。不安で不安でしょうがないので、何か会議があるとみんなぞろぞろ出てきてしまう。

メールやチャットもCCが多すぎたり大人数が入っていたりして、一人で責任を負いたくないという意識が働いていました。また、次から次へと作業に追われて、スプリント内での軌道修正がなかなかできないという問題もありました。



そこで、スクラムやSAFe(Scaled Agile Framework)といった大規模アジャイルのプラクティスを取り入れることになりました。併せて体制の再構築も行い、LACE(Lean-Agile Center of Excellence)という協議体を作って、チーム間の同期や優先順位付け、状況の可視化などを強化しました。

その結果、コミットしたバックログを着実に完了できる体制になってきました。しかし、ベロシティ(開発速度)が安定しないという課題は残っていました。あるスプリントでは多くのフィーチャーが完成するのに、別のスプリントではほとんど完成しないというばらつきがありました。ベロシティを安定させることが重要だと認識しました。



第一フェーズの成果と本質的な開発課題の発見

ここまで「ファーストジャーニー」と名付けた第一フェーズを完了したものの、いくつかの本質的な課題が残されていました。バックログアイテムのレビュー時に「どのように実装するか」という方法論に議論が集中し、「なぜこの機能が必要なのか」という根本的な価値の検討が不十分になるケースが見られました。

また、開発期限が迫ると、特定のスキルを持つ人材に作業が集中し、その人材がボトルネックとなる状況が繰り返し発生していました。さらに、問題の本質を十分に掘り下げないまま、新たな仕組みやルールを追加してしまう傾向も見られました。



これらの課題に対応するため、私たちはBlue Yonderから積極的に学ぶ姿勢を貫きました。Blue Yonderが導入している多様なツールや自動化システムを取り入れた結果、2023年12月時点で2,800以上のGitHubリポジトリに1,000人以上のユーザーが参加し、GitHub Copilotも約300人が活用するまでに至りました。

しかし、ツールの導入は手段に過ぎず、それをどのように効果的に活用するかが本質的な課題です。自動化が進んだとしても、実際に開発効率が向上しているのかを客観的に評価し、継続的に改善していく必要があります。



そこで次のステップとして、「ツールジャーニー」という新たな展開を構想しました。これはツールの単なる導入にとどまらず、ユーザーがそれらの機能を最適に活用できるようになるプロセスを設計するものです。

この取り組みにおいて、「Findy Team+」というツールが重要な役割を果たしています。このツールを活用することで、開発チームの状態を可視化し、データに基づいた分析・評価を行い、具体的な改善アクションにつなげる継続的なサイクルを確立することができました。


可視化によって明らかになった課題の一例として、GitHubの利用状況があります。データ分析の結果、プルリクエストを経由せずに直接マージされているケースや、適切なコードレビューが行われないままマージされているケースが存在することが判明しました。これらの課題を明確に可視化し、運用ルールを徹底することで、大幅な改善を達成しました。



内製化推進の観点からも、可視化は貴重な洞察をもたらしました。パートナー企業との協業において、開発作業の大半がパートナー側によって担われている実態が明確になりました。この課題に対応するため、パートナーチームとのペアプログラミングを通じたナレッジトランスファーを実施するなどの対策を講じた結果、自社エンジニアの開発能力が顕著に向上しました。

現在は、チーム間の開発生産性を比較可能な包括的ダッシュボードを構築中です。このダッシュボードにより、チームメンバーが成果を実感しながら自律的に改善活動を推進できる環境の整備を進めています。

データ駆動による内製化推進と開発効率の可視化

パートナー企業との協業においても、データ主導の意思決定を重視しています。私たちは内製化を推進したいと考えていますが、闇雲にパートナー企業との関係を縮小すれば、開発能力の低下や品質の劣化を招きかねません。

そこで重要になるのが、客観的なデータに基づく現状分析です。パートナー企業がどの程度コードを書いているのか、どれだけ貢献しているのか、品質面ではどの程度の実力があるのかを正確に把握する必要があります。



Findy Team+などの分析ツールを活用することで、パートナー企業のコントリビューション量と自社開発量の比率が明確になり、様々な施策を講じることで自社開発量を増やし、段階的に内製化を進めることができます。

これらの取り組みを支えるため、現在はFindy社と協力してダッシュボードの構築を進めています。チーム全体の効率性、生産性向上の状況、チーム単位でのパフォーマンスなどを一目で把握できるダッシュボードを整備し、常にリアルタイムで改善を進める体制を構築していきたいと考えています。



THINK BIG ACT FIRST FAIL FAST

私はDevOpsに関する書籍の監修もしており、前職では世界トップクラスの開発者と共に働いた経験があります。当時はDevOpsが簡単なものだと思っていましたが、実は彼らの卓越した能力があったから簡単に見えていただけだったということに後になって気づきました。

現在は、The DevOps Handbookの著者であるジーン・キム氏が提唱する『The Three Ways』(三つの道)の概念に立ち返り、組織変革を進めています。



第1の道はITバリューストリームのスピードアップ、つまり開発から運用までのプロセスを加速させることです。第2の道は運用から開発へのフィードバックサイクルを確立すること。そして第3の道は、これらのプロセスを通じて学習する組織を構築することです。

特に第3の道を重視しています。学習する組織を作るためには、学習するためのデータ分析が不可欠です。可視化して、KPIがどうなっているかを分析し、私たちに足りていないものは何かを学び、次のステップに進む。このサイクルを継続的に回すことが極めて重要です。だからこそ、可視化・分析ツールの導入は私たちにとって大きな助けになっています。

私が入社してから、研究開発チームでは『THINK BIG ACT FIRST FAIL FAST』というスローガンを採用しました。



大胆な発想で探究し、ただの企画書だけでなく実際に手を動かして形にする。パワポだけで私を説得しないでくださいというのが私の方針です。そして失敗を恐れず、早期に失敗から学び、次のステップにつなげていく。このアプローチを奨励しています。

アジャイルジャーニーに終着点はありません。完璧な完成形を目指すのではなく、様々なツールやパートナーとの協力を通じて、私たちのアジャイルジャーニーを継続的に進化させていきたいと考えています。ご清聴ありがとうございました。