Microsoft Fabricを活用したデータ統合基盤―データ利活用を見据えた全社共通基盤
アーキテクチャの工夫ポイント
アーキテクチャ選択の背景や意図
第一フロンティア生命では、データ利活用の民主化を加速し、CX向上や業務高度化を実現するため、データ統合基盤の整備に着手しました。
従来は部門単位でAzure Data Factoryを活用し一定の成果を得ていましたが、全社的なデータ利活用ニーズの高まりを受け、分散していたデータを横断的に利用できる基盤が必要となりました。
複数のソリューションを比較した結果、同社は「Microsoft Fabric」を採用。
理由は、①基幹システムがAzure上に構築されており高い親和性があること、②SaaS型で提供されているためインフラ運用負荷を軽減できること、③ローコード基盤により非IT部門でも容易にデータ可視化・データ分析が可能となり、Copilotによる自然言語分析など将来的な拡張性が期待できることです。
アーキテクチャ設計では、セキュリティと利便性の両立を重視し、ワークスペースをユーザー部門や用途別に細分化しました。
個人情報の有無や利用目的に応じてアクセス権を厳密に設定しました。
また、データ構造はメダリオンアーキテクチャを採用し、「Bronze」「Silver」「Gold」の3レイヤーで整理しました。
Bronze層で生データを保持し、Silver層でクレンジング・標準化、Gold層で分析用に最適化することで、ガバナンスを確保しつつ効率的なデータ利活用を実現しました。
さらに、Gold層ではAuto MLやDataAgentを活用し、モデル開発や予測分析を迅速に行える仕組みを整備しました。
現在の課題と今後の改善予定
さらなる高度化に向けていくつかの課題が残されています。
第一に、社内に分散しているデータの更なる収集・蓄積です。
現状では主要なデータを中心に統合していますが、引き続き周辺システムや外部データも含めた拡充を進め、分析の幅を広げていく必要があります。
第二に、構成管理の強化です。
Azure DevOpsを活用した管理体制の整備を検討しており、パイプラインやワークスペース設定のバージョン管理を通じて、変更の追跡性と再現性を高める方針です。
第三に、開発環境の不足です。
現状は本番環境のみで運用しているため、今後は開発環境を追加し、二面構成とすることで、安全な検証と迅速なリリースを両立させる計画です。
これらの取り組みにより、データ統合基盤の信頼性と柔軟性をさらに高め、全社的なデータ利活用を一層推進していきます。
◆執筆:島田 晃平
アーキテクチャを構成するツール
会社情報

第一フロンティア生命保険株式会社
第一生命グループにおいて、個人年金保険や終身保険の提供による「資産形成・承継」の領域に特化した会社として2007年8月に開業。「人生100年時代」を生きる顧客一人ひとりに寄り添い、期待に応える「とっておき」の商品・サービスを提供し続けることで、顧客とその家族の安心で豊かな生活を支え続けている。近年ではデジタル技術の活用にも注力。円滑な手続きや顧客に役立つ情報を提供するための「第一フロンティア生命マイページ」や「LINE公式アカウント」 等、デジタル技術を活用したサービスの充実にも取り組んでいる。


