Cursorで実現した開発速度3.2倍!エンジニア・PM・QA全チームでAI活用する組織変革
ファストドクター株式会社 / gccj
テックリード / テックリード / 従業員規模: 101名〜300名 / エンジニア組織: 11名〜50名
利用プラン | 利用機能 | ツールの利用規模 | ツールの利用開始時期 | 事業形態 |
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Pro | AIによるコーディング支援 | 11名〜50名 | 2025年 | B to B B to C |
利用プラン | Pro |
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利用機能 | AIによるコーディング支援 |
ツールの利用規模 | 11名〜50名 |
ツールの利用開始時期 | 2025年 |
事業形態 | B to B B to C |
導入の背景・解決したかった問題
導入背景
2025年3月。ファストドクターの在宅事業本部(toB)において、組織全体の開発生産性向上という戦略的課題に直面していました。「AIツールを個人の武器として使うだけでは、もはや限界がある」—この認識が、組織変革への起点となったのです。
組織全体でAIを駆使してこそ、競合他社を圧倒する真の優位性が築き上げられる。この戦略的確信が、全社的なAI活用推進の原動力となりました。
医療系システム開発という、極めて特殊で複雑な領域において、我々は多層的な課題の渦中に身を置いていました:
- 完璧性への執拗な追求と革新的スピードの狭間で:直接患者さんの身体や生命に関わる可能性がある重要なものなので、高い精度が求められる。一方で、刻一刻と変化する市場要求へのスピーディーな対応が不可欠
- 迷宮のような外部システム連携:多数の医療機関システムとの錯綜した接続により、開発・テスト工程が蜘蛛の巣のように複雑化
- 暗黙知の孤島化:ドメイン特有の高度専門知識が、特定のエキスパートメンバーに高い属人化
解決したかった問題
- 「AIによる効率化」という幻想からの脱却
- 個々のエンジニアのコーディング効率向上?それは氷山の一角に過ぎません。組織全体の生産性という巨大なピラミッドを築くには、根本的なパラダイムシフトが必要でした
- PM・QAを含む開発エコシステム全体の革命的最適化—これこそが真の戦略的要請だったのです
- 知識という名の宝の山の発掘と循環
- 個人に眠る貴重な経験や洞察を、組織という巨大な頭脳の神経回路として結合させる—この壮大な知識循環システムの構築が急務
- 新参者が戦力となるまでの時間的ロス。これは組織の競争力を根底から蝕む慢性的な課題でした
- 職種間の見えない壁の粉砕
- 仕様策定から実装、そしてQAに至るまでの情報フローに存在する致命的な断絶
- 各専門職が独自のツールに固執することで生まれる、組織全体を蝕む非効率性という毒
比較検討したサービス
1. GitHub Copilot
- 強み:VSCode、GitHubとの圧倒的シームレス統合
- 課題:エンジニア職種への限定的適用。外部ツール連携など技術優位性が一歩遅れ
2. Cline(VSCode拡張)
- 強み:無料という魅力。カスタマイズ性の無限の可能性。優れたSystem promptによる高い精度
- 課題:従量課金制度による予算管理の悪夢。非エンジニアにとっては聳え立つ技術的障壁
3. ChatGPT/Claude(Web版)
- 強み:汎用性という名の万能性。最先端モデルへの直接アクセス
- 課題:開発環境との薄弱な結合。手動に依存するコンテキスト管理という時代遅れ
4. Cursor
- 強み:技術的優位性。(基本)定額
- 課題:月額コストという現実的負担、初期学習フェーズでの時間投資
比較した軸
1. コスト効率性
- Clineの従量課金 vs Cursorのサブスクリプション
- チーム規模での総コスト比較
- 心理的安全性(使用量を気にせず活用できるか)
2. 統一した体験
- 全職種(エンジニア・PM・QA)が同じツールを使えるか
- 個人設定の属人化を防げるか
- オンボーディングコストの削減可能性
3. 先進性と将来性
- 常に先進的な機能使えるのか
- UX的に良いのか
- 急になくなる恐れがあるのか
4. セキュリティ・プライバシー
- プライバシーモード機能
- 医療データを扱う上での安全性
- 監査ログ対応
選定理由
全職種統一のため、Cursor(Proプラン)への移行を決定しました。エンジニアだけでなく、PMやQAまで含めた全員がCursorを使用する体制を構築。移行の主な理由は:
コスト効率性
- Clineの従量課金からCursorのサブスクリプションモデルへの戦略的転換
- チーム全体での月額コストが実質半分以下という劇的なコスト削減を実現
- 使用量を気にせずAIを活用できる心理的安全性—この無形の価値こそが真の生産性向上の礎
統一した体験
- メンバー間でのツール・プロンプト・ワークフローの完全標準化による組織的シナジー
- 個人設定の属人化という組織の癌からの根本的脱却。チーム共通のベストプラクティスを確立し、集合知を最大化
- オンボーディング時の学習コスト大幅削減—新参者が即戦力となる革命的環境
先進性と将来性
- Cursorは同領域において最も先進的なポジションを確立した圧倒的技術優位性
- さすが先行者であり使い勝手は良い
- 営利できている組織だからよりサービス向上に専念できそう
セキュリティ・プライバシー
- SOC 2 Type II認証取得による企業レベルのセキュリティ保証
- プライバシーモード機能—医療データを扱う組織における絶対的安全性の確保
- ゼロデータ保持契約による機密情報の完全保護
- 強制的プライバシーモードによるチーム全体のセキュリティ統制
導入の成果
2025年4月〜6月という僅か3ヶ月間。この短期間で組織が体験した驚愕の数値変化:
開発速度という概念の再定義
- 週次PR数:常識を覆す3.2倍という爆発的増加(9.6→31PR/週)
- サイクルタイム:20%という着実な短縮(74.1→59.1時間)—効率化の真髄
- コミット数:実に245%という天文学的増加(71.4→175.0)
プロセス効率化の革命
- レビュー時間:45%という劇的削減(8.8→4.8時間)—質を保ちながらの時間圧縮
- QAプロセス:29%短縮(23.2→16.4時間)—品質管理の新次元
ビジネスインパクトの現実化
- 即対応タスク:239%という圧倒的増加—機敏性の象徴
- 新規プロダクト開発と戦略的R&D機能という未来への扉の開放
オンボーディングパラダイムの完全刷新
- 新メンバーが入社初日にPR提出という前代未聞の快挙(従来最速記録を24時間短縮)
- 入社3日目での技術ブログ公開—知識共有文化の迅速な体現
導入時の苦労・悩み
1. 非エンジニア職種の初期抵抗
「コードエディタなんて使えない」というPM・QAからの声。週次のハンズオンサポートで画面共有しながら一緒にセットアップすることで解決。
2. ナレッジベース構築の初期投資
最初の1ヶ月は通常業務と並行してドキュメント整備に時間を割く必要があった。しかし、これが後の複利的な効果を生む基盤となった。
3. AI依存症への懸念
「AIの言うことを鵜呑みにしてしまう」リスク。レビュー文化の強化と、AIはあくまで「協働パートナー」という意識付けで対応。
導入に向けた社内への説明
上長・チームへの説明
段階的アプローチの提示
- 第一段階:個人実験
- 第二段階:チーム展開
- 第三段階:組織標準化
ROIの可視化
- 初期投資:ライセンス費用 + ナレッジベース構築工数
- 回収期間:約1ヶ月
- 継続的リターン:開発速度向上による機会創出
AI活用予算の確保
通常業務の20%をAI生産性向上タスクに割り当てることをチームと合意。
途中経過共有
- 毎週AIペアプロで最新の個人実験ノウハウの共有
- 隔週間ごとのチーム内KPT
- 隔週でのAI活用の組織学習(チーム横断)プロンプトカフェ
活用方法
よく使う機能
- Cursor Tab
- 医療ドメイン特有のコンテキストを理解した自動補完。
- Chat with Codebase
- 「この機能の仕様を教えてください」「この業務のFlowを教えてください」など、組織の知見を活用。
- MCP連携
- JIRA MCP:チケット情報の自動参照
- GitHub MCP:PR作成の自動化
- Notion MCP:仕様書との連携
- Context7 MCP:技術スタックの最新を知る
- その他
ツールの良い点
- 真の全職種対応
- エンジニアだけでなく、PM・QAも同じ環境で作業。情報の分断がなくなった。
- 知識の複利効果
- 使えば使うほどナレッジベースが充実し、組織全体が強くなる。
- 既存ワークフローとの親和性
- MCPにより、今まで使っていたツール(JIRA、Notion等)をそのまま活用可能。
- プライバシーモードの安心感
- 医療データを扱う上で、セキュリティ面での不安なく活用できる。
ツールの課題点
- 月額コストの負担
- チーム全体での導入となると、相応のコストがかかる。ただし、生産性向上によるROIは1ヶ月で回収可能。
- 大規模プロジェクトでのパフォーマンス最適化
- ファイル数の多い大規模プロジェクトでは、適切な.cursor/rulesとナレッジベース構築が重要。初期設定の丁寧な構築により、このパフォーマンス課題は大幅に改善可能。
- 学習曲線
- 特に非エンジニアにとっては、最初の2週間程度は慣れが必要。
- AIモデルの不安定性
- 時折、応答品質が低下することがある(プラン変更等の影響)。
ツールを検討されている方へ
成功への3つのKey
小さな種から巨木を育てる哲学
一人の実験者から始まり、効果という確固たる証拠を積み上げ、最終的にチーム全体を巻き込む段階的侵攻戦略。急がば回れ—この古典的知恵の現代的実装。
文化という見えない資産への戦略的投資
- 週次AIペアプログラミング:技術と人間性の融合実験
- 隔週プロンプトカフェ(職種横断):知識の化学反応を促進する坩堝
- ハンズオンサポート:個人の壁を組織の橋に変える錬金術
消費者から創造者への意識革命ナレッジベースへの能動的貢献を組織評価の核心に据える。「受け身の情報摂取者」から「積極的な知識創出者」への根本的パラダイムシフト。
投資対効果という戦略的視座
初期の学習投資とナレッジベース構築—これらは「種まき」の時期。その後に訪れる継続的生産性向上は「複利」という名の果実として、組織に永続的な恩恵をもたらす。
今後の展望
1. 定量計測の更なる強化
より詳細なメトリクスでAI活用の効果を可視化し、継続的改善につなげる。
2. 新規プロジェクトでのAI前提設計
最初からAI活用を前提とした開発プロセスの確立。
3. 他部門への横展開
開発部門での成功事例を基に、在宅事業本部の営業・カスタマーサクセス等への展開やオンライン診療事業本部など他部門への展開
4. 進化し続けるチームに
進化の激しいAI業界において、Claude Code、Gemini CLI等の最新ツールによる柔軟な連携体制を構築し、技術的優位性を継続的に確保。
ファストドクター株式会社 / gccj
テックリード / テックリード / 従業員規模: 101名〜300名 / エンジニア組織: 11名〜50名
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