非エンジニアの生産性を高めるCursor活用事例
株式会社LayerX / applism118
メンバー / プロダクトマネージャー
利用プラン | ツールの利用規模 | ツールの利用開始時期 | 事業形態 |
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Proプラン | 51名〜100名 | 2025年3月 | B to B |
利用プラン | Proプラン |
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ツールの利用規模 | 51名〜100名 |
ツールの利用開始時期 | 2025年3月 |
事業形態 | B to B |
導入の背景・解決したかった問題
導入背景
ツール導入前の課題
Cursor導入以前、私のプロダクトチームでは、現状の実装から正しい仕様を把握すること、またそのために発生するプロダクトマネージャー(PM)とエンジニア間のコミュニケーションコストが課題になっていました。
リリースして数年が経つ大きなプロダクト、かつスピードを優先して開発を続けてきたプロダクトでは、全ての細かい仕様がドキュメントに網羅的に記載されているわけではありません。また、すべてのドキュメントが常に最新の状態に保たれているわけではありません。
上記の背景から、既存機能の仕様を確認したい時にはどうしてもエンジニアに直接質問する必要があり、軽微なエラーの発生条件を確認するたびに、その都度エンジニアの手を止めさせてしまうことに、PMとしては心苦しさを感じていました。
また、仕様を理解してユーザー向けのコンテンツにすること、つまりガイド作成には30分以上かかることもあり、本来もっと注力すべき本質的な企画業務の時間を圧迫していました。
どのような状態を目指していたか
- ツールを導入することで、よりPMやデザイナーが主体的にスピーディーな意思決定を迅速に回せる状態を目指していました。エンジニアにはより複雑で専門的な開発に集中してもらい、仕様検討や影響範囲の特定といった準備段階はPM側で完結させたい。そうすることで、チーム全体の生産性を向上させ、より本質的な議論に時間を使えるようになると考えていました。
比較検討したサービス
- Cursor
- ChatGPT
- Devin
選定理由
最終的にCursorを選んだ決め手は、最新の実装内容を参照しやすいこと・また追加のドキュメントも参照させられることにありました。ChatGPTは汎用性が高く便利ですが、コードの文脈を完全に理解させるのは難しく、あくまで補助的な役割に留まります。
また、仕様理解だけであればDevin Searchでも可能ですが、私たちは「概要を知る」だけでなく、もう一歩踏み込んで 「自らコードに触れてみる」 「コードの内容や仕様書の内容から、新しいアウトプットを作成する」部分まで求めていました。
導入の成果
改善したかった課題はどれくらい解決されたか
Cursorで最新のスキーマを参照することで、以下の業務改善効果が得られました。
仕様確認の効率化: 既存機能の仕様確認でエンジニアに質問する機会が激減。PM単独で業務を進められる範囲が大幅に広がりました。
作業時間の大幅な短縮: 30分以上かかっていたガイド作成は、平均15分ほどに半減しました。
軽微な修正の内製化: これまでエンジニアに依頼していた小さな修正や文言変更も、PMやデザイナーが対応できるようになり、これまでより改善対応が3倍ほど行えるようになりました。
データ分析用のquery作成の高速化: DWHで集計するqueryの作成も非常に高速化し、1/5の時間で行えるようになりました。
導入効果
定量的な成果以上に大きかったのは、チーム内の議論の質が向上したことです。事前に既存仕様への影響範囲を正確に洗い出せるようになったため、会議ではより本質的な論点にフォーカスして議論を進められるようになりました。
導入時の苦労・悩み
Cursor導入の最初の壁は、非エンジニアが経験したことのないエディタUIに慣れることと、開発環境の構築です。見慣れない黒い画面(ターミナル)に表示されるエラーメッセージを見るたびに、心が折れそうになりました。「ここまで苦労しなくてもPMの仕事はできる。今まで通り頑張ればいいのではないか…」そんな迷いが何度も頭をよぎりました。
この最初の「谷」を越えることができたのは、間違いなくチームの強力なサポート体制のおかげです。エンジニアチームは非常に協力的で、環境構築をセルフサービスで進められる仕組みや、専用の質問チャンネルを用意してくれました。 エンジニアの工夫で実現する、ビジネス組織のCursor活用環境の構築術
導入に向けた社内への説明
上長・チームへの説明
上長やチームにはツールの価値を丁寧に説明する必要がありました。特に上長からは「最近、開発しないメンバーからもCursorの有料版の購買申請が上がってくるが、本当に必要なのか?月3,000円は高すぎる。費用対効果を明確にしてほしい」というフィードバックを受けました。
上記に対しては、開発タスクの実施以外にも、コードのindexができているからこそ可能なモックアップの開発や、データベースのスキーマをindexしているからこそできるquery作成など、Cursorだからこそ実現できる価値を説明しました。
活用方法
既存機能の仕様確認: コードを選択し「この機能のバリデーションを説明して」と質問するだけで、自然言語で解説してくれます。
SQLqueryの作成: 「こういう条件でユーザーを抽出したい」と日本語で指示し、SQLの草案を生成。それを元に微調整します。
ドキュメント作成: 機能の実装箇所をAIに要約させ、それを元に仕様書やガイドのたたき台、OKRをスピーディに作成します。
コンテンツ生成: 過去に書き溜めた個人の振り返りメモ(Markdown)を元に、ブログ記事の骨子を作成しています。
よく使う機能
Codebase Indexing(コードベースのindex化) プロジェクト全体のコードをAIが事前に読み込み、構造を完全に理解します。これにより、PMはエンジニアに聞かずとも、プロダクトの全体像を正確に把握できます。
@Symbols / @Docs / @Web(コンテキスト参照機能) チャット内で@記号を使うことで、特定のコードファイル、外部ライブラリのドキュメント、さらには最新のWeb情報まで、必要な情報を瞬時に呼び出し、AIとの対話の文脈に含めることができます。
Agent Mode(エージェントモード) より複雑なタスクに対して、AIが自律的に計画を立て、複数のステップを実行してくれる機能です。
ツールの良い点
コードと対話するように、自然言語で仕様を深く理解できる
リポジトリ全体の文脈を理解した上で、精度の高い回答を生成できる
コードの読解から軽微な修正まで、シームレスに行える
開発者でなくても、学習意欲があれば挑戦できる
ツールの課題点
最初の開発環境構築には、ある程度の技術的知識とサポートが必要
あくまでコードエディタなので、非エンジニアには学習コストがかかる
多機能であるがゆえに、全ての機能を使いこなすには学習が必要
ツールを検討されている方へ
導入を検討されている方へのアドバイスとしては、「行き詰まった時に相談できる環境」と「最初の小さな成功体験」が何よりも重要だということです。私の場合、開発チームのサポートがあったからこそ、導入初期の困難を乗り越え、「自分の業務にこれほど大きなインパクトがあるのか!」という感動を味わうことができました。
非エンジニア目線だと、インストールはできたけれどもいざどう利用すればいいかわからない、ともなりやすいので、具体的なユースケースを共有し合う場の開催などもおすすめです。
今後の展望
今後は、Cursorの活用を通じて得た知見を活かし、究極的には、小さな機能開発のワークフローそのものを変革することを目指しています。
例えば、Slackやドキュメントに散らばるユーザーからの要望をAIが自動で収集・整理し、それを基に仕様のたたき台とヒアリング項目を生成。PMがその内容をレビュー・修正し、承認すると、AIがその仕様書からフロントエンドのコンポーネント、APIのエンドポイント、データベースのスキーマ変更といった実装コードの草案を自動で作成する。このような、要望整理から仕様検討、実装までを半自動化するパイプラインを構築することも視野に入れています。
AIが出力した結果を鵜呑みにするのではなく、試行錯誤を繰り返しながら、AIにはできない「人間だからこそ生み出せる価値」を追求していくことが、これからのPMに求められる姿だと考えています。
株式会社LayerX / applism118
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