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MCP導入の現在地  〜プロダクト開発での活用のリアル〜
公開日 更新日

MCP導入の現在地 〜プロダクト開発での活用のリアル〜

近年、AI技術は急速に進展し、開発現場においてもその活用が広がっています。特にAIエージェント・MCPは、ソフトウェア開発の効率化や新たな可能性を秘めています。 本記事では、開発ワークフローにMCPを取り入れ、試行錯誤されている6社のエンジニアの皆さんより、現在の活用状況と今後の展望についてご寄稿頂きました。 自社の取り組みに活かすヒントを得ていただく場となれば幸いです。
※ご紹介は企業名のアルファベット順となっております

株式会社エブリー

エブリーでは、「明るい変化の積み重なる暮らしを、誰にでも」をパーパスに掲げ、レシピ動画メディア「デリッシュキッチン」/小売DXプロダクト「retailHUB」/ファミリー向け動画メディア「トモニテ」/ビジネスパーソン向け動画メディア「TIMELINE」など、人々のライフスタイルを豊かにするサービスを複数展開しています。

AIファーストカンパニーを掲げ、社内業務の効率化や開発におけるAI活用のみならず、料理アシスタントである「デリッシュAI」をはじめ、様々なプロダクトでのAI活用を進めています。

これまでのAI駆動開発について

現在、私たちのチームではGithub Copilot、Cursor、DevinといったAI開発支援ツールを活用しています。
ChatGPTがリリースされた最初期には、会社として利用料を支援し、現場でのAI活用を後押しするところから始まり、 Github Copilotはリリース初期から導入、Cursorについては2025年4月から全エンジニアに加え、プロダクトマネージャーにも展開しています。
AI活用が当たり前になる時代を見据え、さまざまなAIサービスを積極的に試すことが重要だと考え、随時新しいツールの選定・導入を行っています。

運用面においては、私のチームではまだベストプラクティスを確立できていないため、プロンプトやルールをGit管理ではなく個人で管理しています。その代わりに、定期的に成功事例や失敗事例をチームで共有する体制を構築し、短期的なパフォーマンス低下を許容してでもAIに積極的に任せて検証することを推進しています。

開発組織としては、各種AIツールを用いた成功・失敗事例を共有し、ハンズオン形式で体験する勉強会を定期開催することで、実務での活用意欲を高め、他メンバーの結果から新たなユースケースを創出する環境を整備しています。
AIコーディングエージェントが登場した当初は実用的な運用イメージを描くことが困難でしたが、挑戦weekにおいて一週間自力でのコーディングを封印し、CursorまたはClineのみでの開発を実践することで、AIの得意分野と限界を明確化し、実運用への道筋を確立することができました。

MCPの導入・検証について



今回は私が所属しているTIMELINEの自社クラウドファンディングサイト「TIMELINE CROWDFUNDING」の開発におけるMCP導入について紹介します。

TIMELINE CROWDFUNDINGでは仕様作成にConfluence、バージョン管理にGitHub、CI/CDにCircleCIなどのツールを利用しています。
構成としては比較的一般的かと思いますが、これらのアプリケーションを用いて開発を行う場合、コンテキストスイッチにより効率が低下している点が課題でした。これらの課題を解決するためにMCPサーバーの導入を行いました。 MCPクライアントはCursorを利用しています。
採用しているMCPサーバーはメンバーによって異なりますが、私は通常の開発においては下記のMCPと自作MCPを利用しています。

MCPの自作方法については以前CTOの今井のtech blogで紹介されているのでぜひご確認ください。

昨今Tool Poisoning AttacksをはじめとしてMCPサーバーの脆弱性があるため、基本的に公式か自作のMCPサーバーを利用するようにしています。それらを用いる際にもMCPクライアント側の暴走で不要な操作を行わないようにGitHub MCPではPersonal access tokenで権限を絞ることや、MCP登録後に適切なtoolのみ有効にするよう対応しています。

成果や現在の課題、今後の展望について

MCPによる開発体験の向上はとても顕著に表れていて、特にAtlassian MCPやGitHub MCPではCursorから自然言語で欲しい情報の取得や情報の整理ができることでConfluenceを都度確認しにいく必要もなくなりましたし、実装している部分に関する情報のみを取得するなど、適切な粒度で情報を活用できるようになりました。

Atlassian IntelligenceでRAGのようなセマンティック検索を行う方法やAmazon Bedrockも社内で検証しましたがコストや管理運用、導入の手軽さについてもMCPが優れていると感じています。
またGitHub MCPとCircleCI MCPを用いることでCircleCIのworkflowでエラーが発生した際、エラーログを元にCursorがコードの修正を即座に実行できる点や、その変更をcommitからPull Requestの作成までGitHub MCPで処理できるため、よりスピード感を持った開発が可能になりました。

今後は各社のMCP開発がより活発になっていくと思うので前述のGitHub MCPとCircleCI MCPを合わせた運用のようにさまざまなMCPを掛け合わせることで新しい価値ややり方を模索していこうと考えています。
MCPサーバーの作成は言語ごとのライブラリーを利用することで容易にできるので、提供されていないがAPIはあるようなケースでは社内でMCPサーバーの自作を行うのも選択肢の一つになると思います。

◆執筆:ほんだ だいき 開発本部開発2部TIMELINE @hon_d7174


株式会社MonotaRO

MonotaROの藤本です。MonotaROでは、プラットフォームエンジニアリングを進めつつAI開発を社内で推進するため、MCPサーバーを内製して活用しています。

今やAI開発を導入することで開発者の生産性を大幅に向上できることは周知の事実ですが、具体的な活用を通じて組織に定着させるには、単に開発ツールを導入するだけでなく、業務知識をAI開発の中で活用できる仕組みが重要です。
そこで、MCPサーバーを通じて社内の情報を活用することで、より積極的なAI開発が可能になります。

AI開発に早く取り組むメリット

「新しいものに飛びついて先行者利益があるのか、成熟してからプロセスに組み込めばいいのではないか?」という疑問はあるかと思います。

ここ数年のAIの進歩は早く、OpenAIはGPT-3.5が4.5になり、5になろうかというほどです。前のモデルで工夫して使っていたのが次のモデルでは当たり前にできる、なんてことも珍しくありません。
しかし、早い段階で活用できる領域こそ今後の進歩に乗って加速度的に発展する可能性があります。

よく「巨人の肩に乗る」と表現されますが、それによって得られるメリットは乗っていない人からは見えにくいものです。
そして、早くからAI開発に取り組んできた人たちが今まさに注目しているのが、MCPです。

AI開発のネックを解消するMCPサーバー

基本的に、AIは自分が普段開くファイルのことは分かっているだろう、こちらが指示した以上のこともプロフェッショナルとして検討するだろう、分からなかったら聞いてくるだろう、そう期待してもそのようには動いてくれません。
むしろ、賢いエージェントほど無駄なファイルを読んだり無駄な生成をしない傾向があります。

「Vibeじゃなくて、ちゃんと社内の大量のドキュメントの中から関係するものを見つけてプロセスに合うように作業してくれ」と思うところですが、それはとてもコストがかかります。それはそもそも組織内において情報を集約することが難しいだけでなく、RAGやエージェントといった技術的に高度なものが要求されるためです。

AIが進歩したとはいえ、提供されているモデルをコンテキストウインドウの中でどう使いこなすか、を考えるのが現時点では現実的です。
新しいAIモデルはツール呼び出しができて、開発者の指示のもとでAIが自律的に社内の情報にアクセスするためにツールを活用することが可能です。そのためのツールを提供するのがMCPサーバーです。


MonotaROでのAI開発の導入

MonotaROでは、各開発チームへのAI開発ツールの導入と並行して、DevKitという社内向け開発ツールを通じてマイクロサービス開発の標準化を進めています。
そのDevKitにMCPサーバー機能を取り込むことで、ハンズオンを通じてマイクロサービス開発の中でAI開発を活用する手法をワンストップで提供しています。

こうした取り組みとプラットフォームエンジニアリングを通じて、「今すぐできる」AI開発を実践しています。

公開されているMCPサーバーか内製MCPサーバーか

MCPサーバーを作ろう、と言うと「もう誰かが作っているのではないか?すぐに公式が出るのではないか?」という反応もあるかと思います。

これだけMCPが盛り上がっていることを考えると、おそらく公式のMCPサーバーも登場するでしょう。しかし、それが社内のユースケースにマッチしているかは別問題ですし、実際に使ってみてはじめてプロンプトの難しさを実感することも少なくありません。 社内のユースケースにマッチした内製MCPサーバーをプロンプトから利用できる状況を作っておくことは、将来的に公式MCPサーバーを評価する上でも役立ちます。

また、野良MCPサーバーの利用は控えた方がいいでしょう。ローカルユーザーの権限で動作するためセキュリティの懸念がありますし、プロンプトを汚染する可能性があります。

活用事例

1. 社内DBスキーマ参照ツール

DBスキーマをGitHubで管理している場合、それをMCPツールとして公開することで、AIエージェントがスキーマ情報を参照してコード生成などに活用できます。

ツール名: lookup-database-information
説明: データベーススキーマ情報を参照します。テーブル名が指定されていない場合はテーブル一覧とコメントを返し、
     指定されている場合は該当テーブルのDDLを返します。
パラメータ:
  - database_schema: データベーススキーマ名 (例: "order", "products", "web")
  - table_name: テーブル名 (オプション)

2. GitHub連携ツール

社内リポジトリのコード検索を効率化するツールも効果的です:

ツール名: search-github-code
説明: GitHub内のコードを検索します
パラメータ:
  - query: 検索クエリ
  - language: プログラミング言語(go, python, yamletc)
  - repo: 対象リポジトリ(オプション)

その他、詳細については、自社ブログの 大規模コードベースをAIの業務知識に!作ってわかったMCPサーバー使いこなし術 - MonotaRO Tech Blog
にて紹介しています。

AI+MCPがもたらす変化

MCPサーバーを経由してAIからアクセスしやすい情報が整備されると、それをプロンプトを通じて活用できるようになります。そうしたAIのユースケースが集約され、開発プロセスに反映されることによってますます社内開発者のAI活用が進むという正のサイクルが期待できます。

AIネイティブな組織への進化
MCP活用の成否は、最終的には組織がどれだけAIネイティブであるかに左右されます。単にツールを導入するだけでは不十分で、組織全体として以下の要素が整っていることで成長のサイクルが生まれます。

  1. 情報の適切な集約: 開発に必要な情報が体系的に整理されている
  2. 開発プロセスの整備: GitHubやJiraなどの開発ツールが標準化されている、リリース手順が共通化されている
  3. プロンプトの定義と共有: 有効なプロンプトパターンを組織的に共有できる

こうしたサイクルを考える上で、AIはテック組織の潤滑油として効果的なところがあり、MCPはその効果を高める添加剤のような役割を果たします。

その意味で、MCPは一度導入したらその後も使い続けなくてはならない、と言うわけではないことは念頭に置いておくべきでしょう。 AIは進歩を続けており、進歩によってMCPを使いこなせるようになることもあれば、MCPが不要になることも十分ありえます。

成長のサイクルが変わってオイルが変われば添加剤も使い分ける、それができるようになってくると成熟したと言えるのではないでしょうか。

まとめ

以上のように、「AIは十分成熟してから担当者が技術選定したりフィットギャップを検討すればよい」という考え方ではAIネイティブな組織になっていくことは難しいといえます。

開発者各自がAIツールを使いこなすだけでなく、組織としての知識をAIに活用させる仕組みを構築することで、真の意味でのAI駆動開発が実現可能になります。MCPはその実現に向けた現実的かつ効果的な一歩と言えるでしょう。


株式会社LegalOn Technologies

当社は「法とテクノロジーの力で、安心して前進できる社会を創る。」というパーパスを掲げ、法務知見とAI技術などの最新テクノロジーを組み合わせたサービスを展開するグローバルカンパニーです。

日本と米国に拠点を置き、法務業務を全方位でカバーするAI法務プラットフォーム「LegalOn Cloud」や、グローバル向けAI契約レビューサービス「LegalOn Global」などを提供しており、グローバルにおけるリーガルテックサービスの有償導入社数は7,000社を突破しています。(2025年3月末現在)
2025年1月からはコーポレート領域を支援するAIカウンセル「CorporateOn」を提供開始し、あらゆる社会課題の解決に向けて事業を推進しています。


下図は「LegalOn Cloud」のアーキテクチャを図示したものです。「LegalOn Cloud」ではマイクロサービスアーキテクチャを採用しており、後述するMCPを活用したAI駆動開発によって、フロントエンドアプリやバックエンドの各サービスの開発効率を向上させることを目指しています。MCPサーバーは、ローカルサーバーとリモートサーバーを併用する予定です。


これまでのAI駆動開発について

従来から GitHub Copilot Business と Visual Studio Code の組み合わせを活用してきましたが、さらなる効率化を求めて自立型 AI Agent の先駆けとして注目されていた Devin を導入しました。Devin の導入に際しては、実際の開発現場での有用性を慎重に評価するため、既存のプルリクエストを用いた性能評価や特定チームでのパイロット検証を実施しました。

また、AI搭載エディタとして Cursor も採用しています。Cursor は Visual Studio Code のフォークとして開発された経緯から、既存の開発体験を損なうことなく利用できる点を評価しました。さらに、従量課金ではなくサブスクリプションモデルを採用していることで、予算管理の面でも優位性がありました。導入後は多くのエンジニアが移行し、Azure AD との SSO 連携の自動化により運用負荷も軽減できました。

これらのツール導入における最大の課題は、現場への定着でした。特に、実際の開発環境では想定以上にコンテキストが複雑で、プロンプトやコンテキストの作り込みに苦心しました。この課題に対しては、各チームにエバンジェリストを設置し、段階的な改善アプローチを採用することで対応しています。今後は定期的なハンズオン会や勉強会を通じて、さらなる活用促進と情報共有を図っていく予定です。


MCPの導入・検証について

LegalOn Technologiesでは、CTOオフィスからスピンオフした AI-powered Development Center of Excellence がAI駆動開発の検証を主導しており、直近では特にコーディング時間の削減に重点を置いています。この中でMCPの導入についても検討・検証を行いました。

当社では独自のデザインシステムを構築・運用しており、Figmaで管理されているUIデザインに基づいてフロントエンド開発を行っています。他社でのFigma MCPの成功事例を参考に、当社でもデザインシステムをコンテキストとして活用したフロントエンド実装の効率化を目指しました。

MCPの実装にあたっては、セキュリティを考慮し、既存のOSSを基に独自のMCPサーバーを構築。Figma MCP、社内デザインシステムMCP、Notion MCP の3つのサーバーを実装しました。一部はこれから現場に導入予定のものもあります。特に社内用 Notion MCP では、従来の課題であった権限管理の問題を解決し、個人の認証情報を活用した安全なドキュメントアクセスが実現できる予定です。

成果や現在の課題、今後の展望について

Cursor や Devin は着実に現場での利用が増加しており、Cursor に関しては現時点で半数程度のエンジニアが Visual Studio Code から Cursor に乗り換えています。また、Devin も4月に全社展開を行って以降、ほぼ毎日利用されており、チームの一員として馴染みつつあります。
全社的な生産性向上が数値として現れてくるにはもう少し時間が必要そうですが、少なくとも現時点で短期間でのPoCや新サーバーの立ち上げなどでは AI Agent 導入の効果が現れており、従来よりも圧倒的な短期間での開発を実現することができています。5月には上述したFigma MCPと社内のデザインシステムMCPを組み合わせた開発手法の運用が始まり、こちらもフロントエンドの実装効率化に効果が現れ始めています。

とはいえ、まだまだ生成精度や利用率を向上させたいという思いもあります。まずは上述したように現場への定着率を向上させるため、社内ハンズオン会や勉強会などを積極的に開催していく予定です。また、並行してすでに利用されている技術による生成精度を高めるための検証を続けつつ、コーディングに限らず開発プロセス全般の効率化に手を広げていくことで、顧客への価値提供サイクルをより高速に回せるような開発組織を目指していきます。

◆執筆:時武佑太 CTOオフィス リーダー @tokichieto


株式会社Schoo

株式会社Schoo(スクー)は「世の中から卒業をなくす」をミッションに社会人向けのオンライン学習サービスを展開しています。法人向けのオンライン学習サービスである「Schoo for Business」、個人向けには生放送型学習コミュニティ「Schoo for Personal」、高等教育機関・社会人教育事業者向けの「Schoo Swing」を展開。地方自治体への導入推進を含めた地域創生事業にも取り組み、学びの格差がなく誰もが学び続けられる社会の実現を目指しています。


これまでのAI駆動開発について

当社では2024年5〜6月にGitHub Copilotを全エンジニアが利用できる体制を整え、日常のコーディング補完やペアプログラミング代替として活用し始めました。

さらに2025年5月からは、社内から「試したい」との要望が上がったCursorをまずは無料版で導入し、リポジトリ横断検索やインライン対話の利便性を検証中です(有料版移行も検討中)。あわせてNotebookLMに公式ドキュメントを読み込ませ、長大な技術資料を要約・解釈してナレッジ共有に役立てています。

一方、AI活用度には個人差が大きく、積極利用者とほぼ未使用者の間で生産性ギャップが生じる課題も浮上しました。問題点の工夫として、リポジトリ直下にCopilotのカスタムインストラクションを設置し推奨する記述方法やレビュー観点を記載しました。
Copilot自身にコード規約の逸脱を指摘させる仕組みを組み込み、個人利用に閉じがちだった知見をチーム全体の品質向上へ還元するよう工夫してみています。

MCPの導入・検証について

MCPは、10年以上運営されているアプリケーションのレガシー環境をGo+BFF(Hono x GraphQL)+Nuxt 3へと移行する大規模リプレイスプロジェクトで導入を進めています。
具体的には、MCPサーバーを軸に実装・テスト・ドキュメント生成を自動化し、フロントエンド開発の作業効率をより高めようと検討しています。 AI エージェント × MCP で「デザイン→コード→テスト」一気通貫の自動生成ができるよう、現在検証中です。

MCP クライアントは現在はVSCodeのみです。しかし今後はCursorへの移行を計画しています。

MCP サーバーは下記を採用しています。
・Playwright MCP
  E2E テストケースの生成依頼/保守コスト削減
・Figma Context MCP(あるいはFigmaを使用しないスクリーンショット方式)
  UI コンポーネントのコード自動生成でデザイナー→開発のハンドオフ短縮
・Nuxt MCP
  新規参加者が NuxtApp 情報を即参照できるオンボーディング活用
・Baseline MCP
  特定のHTML、CSS、JS、Web APIのブラウザ互換性調査を支援
・そのほか必要に応じて自社内でのMCPサーバーも検討

成果や現在の課題、今後の展望について

現段階は検証フェーズにあり、MCP サーバー×AIエージェントによる開発効率・品質向上の定量指標は計測途中で、具体的なKPI達成には至ってはおりません。

現在の課題としては、MCP サーバーの構造・価値が全社に十分伝わらず理解度にばらつきがあることです。AI活用スキルも個人差が大きく、ワークフロー定着が限定的になっています。この課題に対しては、ユースケースを図解した社内勉強会とハンズオンを月次開催し、利用ガイドラインとベストプラクティスを整備して、MCPの組織的な定着を目指しています。

また、サーバー経由で扱うソースや設計情報の漏えいリスクなど、セキュリティ面の懸念が残っている点も課題として認識しています。これに対して、サーバー立ち上げにDenoを活用しパーミッションモデルを絞る、Dockerを活用したMCPサーバー環境のコンテナ化、最低限のAPIを活用して影響範囲を下げるようにする他、社内リモートMCPサーバーとしての展開していく場合はインフラ・情シスなどとリスク、懸念点を洗い出し安定して活用できるように検討しています。

今後はエンジニアがMCPサーバーを作成し、社内のMCPエコシステムとして成熟させていけるよう、推進していきたいと考えています。またエンジニア以外のMCP活用事例も増やすため、社内展開を積極的に行っていく予定です。

◆執筆:大山奥人 技術戦略部門 技術戦略ユニット フロントエンドエンジニア @okuto_oyama


株式会社SODA

株式会社SODAでは、「世界中が熱狂する次のマーケットプレイスをつくる」をミッションに、ファッション・コレクティブルマーケットプレイス「スニダン」を運営しています。

これまでのAI駆動開発について

弊社では、AI搭載エディタとしてCursorを採用しており、他にもエージェント型コーディングツールとして、DevinやClaude Codeを社内で検証・活用しています。

Cursorの導入にあたっては、Visual Studio Codeを利用するメンバが多かったので、そこまで苦労はありませんでした。
Visual Studio Codeを使っていないメンバに対しては、.vscodeで推奨拡張機能を作成して対応しました。

運用面では、.cursor/promptsディレクトリを作成し、チーム内でプロンプトを共有・再利用しようと試みましたが、 再利用性の高いプロンプトが意外と少なく、プロンプトの拡充が思うように進まず、今後の課題となっています。
また、実運用に乗せるまでには、Rulesの整備や、トップダウンの継続的な発信、Cursorオンボーディング資料の作成等、 Cursorをチームや組織に浸透させるための取り組みが必要でした。

MCPの導入・検証について

今回のMCP導入は、日々の開発タスクの生産性向上と、自動テストのシナリオ作成自動化を目的として、社内のフロントエンドリプレイスプロジェクトを中心に進めてきました。
ただ、非公式のMCPサーバーはリスクが多いので、社内では公式のMCPサーバーしか利用しないように注意喚起をしました。
現在、社内で活用しているMCPサーバーは、GitHub MCPとPlaywright MCPになります。以下にそれぞれの目的と苦労した点をまとめます。

1. GitHub MCP

GitHub MCPは、PRの作成が目的で導入しました。
プロンプト設計において、環境変数の参照方法や制約条件を工夫しました。

2. Playwright MCP

Playwright MCPは、E2Eテスト設計を目的として導入しました。
GitHub MCPと同様に、テストシナリオ生成時のプロンプトに制約条件を設けて調整しました。
しかし、URL, class名などを間違えるなど精度があまり高くない点と、消費トークンが多く途切れる上にリトライもできない点が課題となっています。

成果や現在の課題、今後の展望について

メンバーへのオンボーディングやRulesについてはある程度整備でき、Design DocsもNotionからGitHubに移行され、LLMを使う上でのコンテキストは拡充されてきました。
ただ、再利用可能なプロンプトが溜まっておらず、活用方法や活用頻度にバラつきがあったり、AIエージェントによる生産性向上が計測できていないので、今後はプロンプトのベストプラクティスを溜めていったり、AIエージェントによるPRの計測を通して、更なる生産性向上を模索していきたいと思います。


ファインディ株式会社

ファインディ株式会社は、「つくる人がかがやけば、世界はきっと豊かになる」をミッションに掲げ、エンジニア向けのプロダクトを複数展開しています。 独自のアルゴリズムとヒューマニティを融合し、エンジニア個人や組織、企業の成長支援を通じて日本のイノベーション創出を最大化することを目指しています。
IT/Webエンジニアの転職サービス「Findy」「Findy Freelance」及び、エンジニア組織支援SaaS「Findy Team+(チームプラス)」を展開しています。

これまでのAI駆動開発について

弊社では、エンジニアの生産性向上やナレッジの活用を目的に、さまざまなAIツールを導入しています。

まず、GitHub CopilotについてはCopilot Enterpriseを契約し、一通りの機能を活用しています。現在はCoding Agentの検証も進行中です。
また希望するエンジニアにClaudeのAPIキーを発行し、柔軟に利用可能としています。発行したClaudeのAPIキーをClineで利用しているケースもあります。
実装時にはClineやCursorなどを使いながら開発を実施しています。中でもCursorに関してはエンジニアだけでなく、デザインチームも含めて希望者が活用しています。

AIの活用は実装にとどまらず、たとえばエラー通知の原因調査、dependabotのライブラリ更新の変更内容や影響調査、タスク出しや既存実装の調査など、さまざまな工程に広がっています。これにより、トータルの品質やスピードを向上させています。
さらに、Pull request上に活用したプロンプトを書いたり、custom-instructions.md.clinerules などのドキュメントを更新したりすることで、プロンプトの再利用やチーム内での知見共有にも努めています。加えて、手こずったやりとりを生成AIにまとめなおしてもらうことで効果的なプロンプトを作成することにも挑戦しています。

細かなタスクについてはDevinに依頼することで、対応できるタスク量が全体的に増えています。小規模で単純なタスクを細かく任せており、同時にナレッジの蓄積も進めています。実際、2025年4月の1ヶ月で、Devinだけで400個以上のPull requestを作成しているというデータも出ています。
また、Slackのワークフローから必要な情報を入力してもらい、その情報を元にDevinからPull requestを作成するといったことも実現しています。

さらに、ZoomやGoogle Meetの録画データをNotebook LLMに投げて、サマリや議事録を自動作成しています。これにより、ミーティング中の議事録の作成は不要となり、議論に集中できる環境を整えました。

MCPの導入・検証について

弊社ではMCPの導入にも積極的に取り組んでいます。
例えば、SentryのMCPを利用して不具合を自動で修正する仕組みを実現しました。
実現はとても簡単です。
Sentryに上がってきたIssueをMCP経由で取得して、その内容をそのままLLMに渡すだけです。SentryのIssueの内容をそのままLLMに渡しながら、不具合修正をするようにプロンプトを実行するだけで、原因を突き止めたあとに自動でコード修正まで実現することが可能です。

また、Filesystem MCPを活用することで、複数リポジトリにまたがるファイル参照を可能にしました。
弊社では開発用リポジトリと、ドキュメントなどの管理用リポジトリを分けて運用しているのですが、基本的にGitHub Copilotはリポジトリをまたいだ参照を許可していません。
そこでFilesystem MCPの出番です。対象のリポジトリを全てローカル環境にcloneしてきて、Filesystem MCPの参照先に追加します。この設定を追加することによって、開発用リポジトリで作業をしつつ、管理用リポジトリのファイルにアクセスして、プロンプトで利用できるようにしました。
PdMがデータ構造や画面を参照しながら施策などを壁打ちしたいときにもFilesystem MCPは有効です。対象の開発リポジトリを全てローカル環境にcloneしてきて、テーブルの構造や画面レイアウトなどをLLMに渡すことで、現状の実装を踏まえたうえでの壁打ちを実現しました。

更に弊社ではMCPサーバーを独自に実装し、技術ブログでもその内容を発信しています。
Findyの爆速開発を支える生成AI活用 〜MCPサーバー作成編〜
Findyの爆速開発を支える生成AI活用 〜リモートMCPサーバー公開編〜
Nxを用いたmonorepo管理をベースに、エンジニアなら誰でもMCPサーバーを自作し、展開できるようなフローを整備しました。この整備により、エンジニアのMCPへの解像度を高めることに成功しました。

成果や現在の課題、今後の展望について

AIツールやMCPの導入により、開発体験の向上や業務効率化に一定の成果が見られていますが、全社的な統一にはまだ道半ばです。現在はチームごとの取り組みにばらつきがあり、点と点での活用にとどまっている状況です。

今後は、これらの点を「線」として結び、開発組織全体としてのAI活用フローを確立していきたいと考えています。
MCPサーバー構築環境の整備を通じて社内の理解度が高まり、具体的な活用シーンも着実に増えています。
次のステップとしては、社内全体での一貫したAI×MCP活用を目指し、さらなる推進を図っていきます。

◆執筆:戸田 千隼 ファインディ株式会社 CTO室 開発推進