Findy Tools
開発ツールのレビューサイト
目次
Xのツイートボタン
このエントリーをはてなブックマークに追加
Xのツイートボタン
このエントリーをはてなブックマークに追加
【内製開発Summit 2025】生成AIツールを活用してシステム開発内製化の課題にアプローチ。内製化のアップデートを実現
公開日 更新日

【内製開発Summit 2025】生成AIツールを活用してシステム開発内製化の課題にアプローチ。内製化のアップデートを実現

ファインディ株式会社主催が2025年2月27日(木)に開催した「内製開発Summit 2025」で、トランスコスモス・デジタル・テクノロジー代表取締役社長の所年雄氏による「生成AIを活用し、システム開発の内製化をアップデートせよ!」と題したランチセッションが行われました。内製化における3つの課題「品質管理」「人材育成」「体制最適化」について、生成AIやオフショアを活用した解決策を紹介します。



■プロフィール
所 年雄(Toshio Tokoro)
トランスコスモス株式会社 常務執行役員
株式会社トランスコスモス・デジタル・テクノロジー 代表取締役社長
専門商社勤務後、1999年にトランスコスモス入社。顧客コミュニケーションの最適化を実現するサービスの開発と運用を担当し、LINEを利用したチャットサポートサービスを日本で最初に企画実装。2018年よりデジタルマーケティング全般のサービス部門の責任者を経て、現在はトランスコスモス全体のシステム開発を統括する本部を担当。また、2024年1月よりトランスコスモスの戦略子会社のトランスコスモス・デジタル・テクノロジーの代表取締役社長に就任し、グループ全体でのエンジニアリソース最大活用を目指している。

グループ企業のシステム開発を引き受ける「内製開発部隊」兼「SIer」

最初に、私個人と、トランスコスモス・デジタル・テクノロジーという会社について紹介します。私は、トランスコスモスの常務執行役員、トランスコスモス・デジタル・テクノロジーの代表取締役社長を務める所年雄と申します。異業種からトランスコスモスに転職し、2~3年で転職するつもりが、もう25年目に入ってしまいました。

入社当初はコールセンター部門でFAQやナレッジマネジメントサービスの立ち上げなどを担当し、その後ソーシャルメディアマーケティングのサービス、LINEを用いた問い合わせサービスなどを実装してきました。直近ではデジタルマーケティング部門を担当するとともに、トランスコスモス・デジタル・テクノロジーの代表に就任いたしました。

私が所属するトランスコスモスという会社をご存じの方は、コールセンターというイメージが強いのではないでしょうか。ご想像の通り、売上のうち3~4割はコールセンター系で構成されています。他にはデジタルマーケティングや、ASEANを中心とした海外でのサービス販売、ECサイトの構築、ECサイトのロジスティクスも含めたECワンストップサービスなども提供しています。

そのグループ企業であるトランスコスモス・デジタル・テクノロジーは、クライアント様のシステム開発を請け負うSIer事業とともに、トランスコスモスグループ内のオペレーション効率や生産性を向上させるシステム開発を担っており、内製開発部隊とも言えます。

創業者ひとりのユニコーンが登場? 生成AIがもたらす開発環境の変化

少し前であれば、システムのアップデートは年に1回程度でしたが、生成AIの進化により1~2週間ごとのものもあるほどです。そんな中、昨年の「SoftBank World 2024」というイベントで、ソフトバンク株式会社のCEO宮川潤一さんのプレゼンテーションが印象的でした。「これまで、企業の中で新規事業を立ち上げるにはたくさんの人員が必要だったが、生成AIが人の代わりをすれば少ない人数で済む」ーーそれを聞いて、スタートアップ業界にも同じことが起こるだろうと考えました。



スタートアップがユニコーン企業になるにはたくさんの人員が必要です。市場開発、システム開発、マーケティング、マネジメントなどそれぞれの専門家が担当しなくてはなりません。多くの専門領域を一人では担えないため、タスクが増えるごとに2人目、3人目と人を追加しなくてはなりません。

ところが今後は生成AIの進化により、創業者ひとりのユニコーンも発生し得るでしょう。Keynoteセッションで及川卓也さんもおっしゃっていましたが、人間が不得意な部分をAIが担い、人間はAIができない部分だけを担当する。それにより、実現するだろうと考えます。

シリコンバレーでは、AIを活用した社員数名のスタートアップが、市場規模10億ドルまでは届かずとも近いところまでは実現しているようです。とんでもない話のようですが、我々トランスコスモスにとっては身近かつ大変な問題になっています。今の話をコールセンターに置き換えてみます。



コールセンターは典型的な労働集約型のビジネスです。電話がなかなか繋がらずご迷惑をおかけしているかもしれませんが、コールセンターにはオペレーターと呼ばれる人たちが多数働いており、小さいセンターで少なくとも数十名、大きいセンターで数百名程度います。それが数か所に及ぶ場合もあります。

オペレーターが答えられないときの問い合わせ先であるスーパーバイザーも、オペレーター数十人に対して1人は必要です。他にも、ナレッジマネジメントを作る人、営業やマネージャーなども含め、コールセンターは非常に多くの人材が必要になります。

ところが、生成AIが進化すると、人がAIに置き換わっていきます。最近コールセンターへ電話で問い合わせた方はすでに体験されているかもしれませんが、AIが音声対応してくれるケースが増えています。オペレーターの問い合わせ先であるスーパーバイザーはフロントに出てこず内部処理をしていますが、この部分もAI化が進んでいます。

FAQやナレッジマネジメントも同様です。お客様とオペレーターの会話をAIが聞き、自社のFAQサイトに同様の内容がまだなければ、自動的にコンテンツを生成して担当者にレコメンドする――そんな仕組みもできています。AIとチームを組めば、オペレーター換算で数百名規模のコンタクトセンターが、スタッフ数名で運営できるようになるでしょう。売上の3~4割をコールセンターが占めているトランスコスモスでは、切実な問題になってきています。

そういったスタートアップが出てくる想定のもと、我々トランスコスモスグループは足元をすくわれないよう、自ら変化するべく自社内のテクノロジー組織を強化しているところです。自社のノウハウを自社グループでテクノロジーに落とし込んでいけるよう内製開発の取り組みを進めています。

企業のDX化により内製化が増加

内製開発の活発化にはいろいろな理由がありますが、ひとつにはコロナ前くらいから言われ始めたビジネスのDX化があるのではないでしょうか。企業の内側に開発チームを置き、内製化を進める流れが進んでいます。ではなぜ、我々のようなSIerに任せるのではなく、企業内製開発を進めるのでしょう。私自身は、経営の中心にテクノロジーが入り込んできた、という理由が大きいと考えています。



本イベントのKeynoteでも及川卓也さんがおっしゃっていましたが、「価値創出の源泉を、データをメインとして考えている」という点が、「これまでのDX」と「これからのDX」の違いでしょう。「モノを作るプロセスのDX化」と「作ったものから発生したデータを利用した新たなサービスやビジネスの創造」の違いではないでしょうか。テクノロジーシステムが経営の中心にあるべきと考えれば、内部に作り手がいなければならならない。その結果、内製化が進んでいるのだろうと考えています。

内製化を進めるにあたっての大きな課題。まずは品質管理

内製化の流れに乗ったとしても、すべてうまくいくわけではありません。IPAによる2024年のアンケートを見ると、内製開発を進めるにあたっての課題として「人材の確保や育成が難しい」「新しい技術への対応が難しい」「開発量の増減への対応が難しい」「内製化には利点も欠点もあるため、判断が難しい」などが上位に挙げられています。



さまざまな課題に対し、我々が考え、実施していること、SIerとして支援できるサービスなどを、この後に紹介させていただきます。内製化の課題として、我々は3つを挙げています。「開発品質の課題」「人材育成の課題」「体制最適化の課題」です。

まずはひとつめ「開発品質の課題」について、解決へのアプローチを紹介していきましょう。Keynoteで、及川さんから「要件定義から開発まで自社でやりましょう」というお話もありましたが、開発まで社内で担った場合にまず当たる壁が「いつまでたっても完成品が出来上がらない」という問題です。これは品質管理の課題です。

我々は、生成AIを活用したテストドリブンの品質管理を採用しています。開発者の方にはよく知られたV字モデルによる品質管理です。ウォーターフォール型に適していると思われがちですが、アレンジすればアジャイル開発にも十分利用できます。V字モデルによる、AIを使ったテストドリブンの品質管理を具体的に紹介します。



この図の左側、ソフトウェアを開発する工程が下に向かい、それに対応する右側のテスト工程が上に向かうのでV字モデルと呼ばれています。左側には要件定義や基本設計、詳細設計の工程があり、それに合わせて右側のテストが発生します。例えば、要件定義に定められた内容が反映されているかどうか、システムテストで確認していきます。開発の工程で作られたドキュメントを基にテスト計画書を作り、それが満たされていることをテストしていきます。

左と右が対になっているので、定義書ができない限り次の工程に進めず、正しいテスト結果が出なければ次の工程に進めません。結果、高い品質のシステムが実現するはずなのですが、実際にはシステム開発のトラブルや不具合は多くなりがちです。

理由の多くは、開発プログラムを実装する際のドキュメントが属人化しており、品質が一定でないためです。本来、開発の各工程で正確なドキュメント作成をすべきなのに、それがなかなかできません。人間は怠けたりサボったりする動物なので、慣れてくると「詳細設計は頭の中にあるから大丈夫」と考えます。そこで、このドキュメント作成をAIにやってもらえばよいと考えるのではないでしょうか。

ところが我々は、そういうアプローチを取りません。我々の解決策は、AIによるドキュメントの品質チェックです。AIは、左側の上流工程で作成される成果物に対して、必要な内容や先行工程で決定された内容が反映されていることをチェックし、テスト計画書を自動生成します。チェックされるドキュメントはこれまでと変わらずに人間が作成し、AIに提出しチェックしてもらってOKが出れば次の工程に進めるというわけです。

ただ、ここでもまた問題が残ります。AIがテスト計画書を作っても、テスト自体を人がサボると、内在していたトラブルや不具合が顕在化しません。そこで、人が実施したテスト結果が正しく想定されたものであるかどうか、AIがチェックするのです。AIによるOKがなければ、次の工程に進めない仕組みにしています。

人の作業の良し悪しをAIがチェックするので、SFっぽいかもしれません。元来、人は優秀ですが、感情や体調によって作業にムラが出ます。ムラを許さないためにAIを使ってチェックするようにしています。現在、内部でさまざまな取り組みを進めており、この春以降に皆様のような内製開発を進める方々のプラットフォームとしてご提供できる予定です。また、要件定義書や基本設計書を対話形式で生成する機能も開発しています。



また、当然ながら内製開発で手が足りなければ、我々トランスコスモス・デジタル・テクノロジーがSIerとして開発を受けられます。その際も、当然このプラットフォームを使って品質の担保された成果物を提出させていただきます。

人材育成の課題にはローコード開発で対応

2つ目の課題は、IPAのアンケートにもあった人材育成です。近年、開発者は採用も育成も非常に難しくなっています。採用コストが上昇するとともに、加速するテクノロジー進化に人材の育成が追いつかなくなっています。

内製開発するとはいえ、私たちのような開発だけをやっているプロでない限りは、開発者の前にビジネスのプロであるべきでしょう。そのために、開発のプラットフォームはある程度割り切るべきではないでしょうか。人材の育成を標準化でき、素早く開発できる機能を持ったツールをおすすめします。つまりローコード/ノーコードツールです。我々は、Microsoft Power Platformと、Adaloを取り扱っています。



Adaloは世界的に有名な、モバイル用のネイティブアプリを作れるノーコード/ローコードソリューションで、今後、トランスコスモスグループが日本で独占的に販売する予定です。Adaloのサイトで申し込みをしていただくと、日本国内の企業様ならトランスコスモスが日本語で対応いたします。



もうひとつのMicrosoft Power Platformは、ユーザーがカスタムビジネスアプリケーションを構築したり、ワークフローの自動化データを分析したりできるローコード開発ツールのコレクションです。主に使うのは、アプリを作るPower Apps、人の作業を自動化するPower Automate、データを可視化するPower BIの3つとなります。

「これからはデータが重要」と申し上げたように、Power Appsでアプリケーションを作り、消費者の方や従業員の方が利用したデータをPower Automateで集計、Power BIで見える化する――そのような形で導入する企業様が多いです。



ここで、「ローコード」「ノーコード」という言葉を定義しておきます。ノーコードは、プログラミングのスキルや知識がなくてもシステム開発ができます。ローコードはプログラミングのスキルや知識を「ほぼ」必要としません。プロコードは普通のプログラミングで、プログラマーがソースコードを書く必要があります。

ノーコードは、本当にスキルがなくても開発できるのでしょうか。首を横に振っている方もいらっしゃいますね。私個人の考えでは、ローコードだとしても、アルゴリズムとロジックのスキルは必要です。ビジネスをプログラミングに起こすなら、プログラムの流れやデータの扱い、条件分岐などの設計図が頭の中で描けないとシステムは作れません。

とはいえ、これは過去の話になりつつあります。生成AIの出現と進化によって、少しずつ開発者に必要なスキルのハードルが下がっています。Power Appsには、ソースコードのロジックを解析し、説明してくれる機能があります。前任者が書いたソースコードの内容が理解できなくても、AIが全て支援してくれるのです。さらにワーニングやエラーが出ると、その内容も指摘してくれます。

また、プログラマーはソースコードを書く際、後で自分やほかの人が見る時に理解しやすくするために、内容をコメントとして入れます。現在、ソースコードを打ち込むと自動でコメントを入れてくれる生成AIの機能はいくつかありますが、Power Appsは逆に、コメントを書くとその内容に合ったソースコードを生成してくれます。日本語が使えれば、ある程度のソースコードが書けるのです。まだベータ版ですが、仕上がってきたら非常に面白いと考えています。

プロンプトを入力すると、日本語のプロンプトとソースコードを書いてくれる機能もあります。ソースコード生成の機能は、Genie AI、GitHub Copilot、JITERA、Cursorなども持っていますが、プロコードで生成されるソースコードは、エンタープライズ的に若干のセキュリティ課題が残ると考える向きもあるでしょう。そのため、限定されたPower Platform上で利用する限りは、セキュリティの問題や不具合が非常に起こりにくいというメリットもあります。

加えて、内製開発を進めるにはスピードが重要で、ベータ版やモックアップをすぐに作れるようにしておかなくてはなりません。そのため、開発する環境を絞って人材育成し、内製開発の体制を作るべきでしょう。



ただ、それすらも難しい場合には、我々の会社でMicrosoft Power Platformのコンサルティングや教育、サポートデスク、開発支援などのサービスを提供しております。お客様が必要なアプリケーションを、導入後数日で開発した事例もあります。さらに、「コンサルティング」「教育」「サポートデスク」などの単位で個別提供も可能です。

体制最適化のためのオフショア開発

テクノロジーが経営の中心に入り込んだとは言え、内製開発の部隊はずっとシステム開発を続けるわけではありません。最大の開発ボリュームに合わせて体制を作ると、開発量が減った際にコストだけがかかり続け、目的と手段が入れ替わりかねません。この課題に対する私たちの回答は、オフショアのリソース活用です。

ここまで生成AIの話をしておきながら、いきなりアナログで昔ながらの解決策を紹介していると感じられるかもしれません。とはいえ、大量な開発者の手が早急に必要な時や、ラボ的に使う際など、さまざまな活用の方法があり、メリットは大きいと考えています。

我々トランスコスモスグループは、中国やベトナムにオフショア拠点を持っており、日本国内のエンジニアも含めて開発者2600名以上の体制を整えています。オフショアの経験がある方は、品質管理や言語、コスト、退職などさまざまな課題を感じているかもしれませんが、これらは、日本語も英語も開発も分かる「ブリッジSE」という人材を間に入れればほとんど解決します。



「オフショアの人たちは日本品質を理解しない」という声をよく聞きますが、ブリッジSEがいれば、クライアントの要件を理解し、的確なオフショアリソースのアサインをして、開発フェーズをリードでき、課題のほとんどを解決できます。



我々がオフショアのリソースをサービスとしてご提供する際は、クライアント様に伴走するためのブリッジSEをアサインいたします。その上で、生成AIを利用したテストドリブンの品質管理を利用しながら、しっかりと成果物を出すサービス提供が可能です。

ここまで、3つの課題に対して我々なりの課題解決方法を紹介してきました。今さらながら、皆様に「内製開発とは何か」という質問を投げかけたいと思います。「自社内にシステム開発チームを持つこと」「自社オリジナルのシステムを開発すること」「社員全員がプログラムを組めるようになること」などいろいろ考えがあると思いますが、私は「自社に必要なテクノロジーをコントロールできていること」だと考えています。

自社のビジネスに適した新しいテクノロジーが登場したら、それを見逃さずにキャッチアップし、素早く自社に実装できる体制とスキルがあること。それが、自社に必要なテクノロジーをコントロールしている状態であり、内製開発が完成している状態でしょう。

皆様には、そこを目指して頑張っていただきたいと思うとともに、もしお困りのことがあれば私どものようなSIerをお呼び立ていただければと考えます。我々トランスコスモス・デジタル・テクノロジーという会社は「変化は進化だ」というスローガンのもと、日々生成AIやテクノロジーを通してシステム開発をアップデートすべく努力をしています。

この度は、ご清聴ありがとうございました。



アーカイブ動画はこちら

https://findy-tools.io/events/3955aeec8a46cd0d5a4b