【アーキテクチャConference 2025】7,000店舗で実稼働:大規模業務システムとヒューマンインタラクションが融合するAIの全貌
2025年11月20日・11月21日に、ファインディ株式会社が主催するイベント「アーキテクチャConference 2025」が、ベルサール羽田空港にて開催されました。
本記事では、11月20日に登壇したクーガー株式会社のセッションを取り上げます。ファミリーマート約7,000店舗で実稼働しているバーチャルヒューマンエージェント「レイチェル」と、それを支える技術基盤「LUDENS」の全貌をご紹介いただきました。
クーガーが挑む大規模業務システム×ヒューマンインタラクション
ゲーム開発と大規模検索エンジンの知見が融合するチーム
石井:弊社はゲーム、知覚AI、検索エンジンという全然違う分野で世界トップレベルであることが大きな特徴です。知覚AIではFacebookのコンペで2位、IEEEのコンペで世界2位。また検索エンジンに関しては、私自身が楽天の大規模検索エンジンを開発していましたし、他にもMicrosoft Bingやメルカリなどの大規模検索エンジンを作っていたメンバーが集まっています。

またスタンフォード大学でバーチャルヒューマンエージェントの講義を行っています。
コンビニ7,000店舗で実稼働。店長業務を最大3割削減するレイチェル
ゲーム感覚の店舗運営支援で、業績向上を実現
今回ご紹介するのは、バーチャルヒューマンエージェント「レイチェル」です。現時点で公表できるものとして、ファミリーマートの7,000店舗に導入されております。
ユニークなのは、レイチェルは消費者が使うものではなく店長向けであるという点です 。約7,000店舗という数はファミリーマートの約半数に相当しますが、その店舗の店長が毎日レイチェルとコミュニケーションして業務を行っています。

結果として、レイチェルを多く使っている店舗は、そうでない店舗よりも良い業績が出ています。ゲーム感覚で店舗運営し、レイチェルとのコミュニケーションの中でコツを掴む、という状態をつくり上げているのです。
レイチェルは日々の商品の売上や客数を確認できるだけでなく、店舗ごとの特徴をもとに発注や売り場づくりなどをアドバイスします。また競争意識の強い店長には自分の店の売上順位が分かる情報も伝えるなど、店長の性格に合わせたコミュニケーションも可能です。結果としておよそ2~3割の店長業務を削減できると言われています。

データ活用の「理解の壁」を、一人ひとりに合わせたコミュニケーションで解決
現在、世の中では既存のデータベースなどに加えてそれを加工する AI が多く存在している状態であり、情報を正しく理解して行動につなげるのが、個人の能力に依存していると我々は見ています。そのような中でレイチェルが支援するのは、その人に合わせたタイミングやポイントで要約、説明、フィードバック、リマインド、共感を行うことです。これによって理解できる人が格段に増えます。ゲームのチュートリアルでコツを掴むのに近く、業務の中でそれができるのがポイントです。

理解・納得・習慣化のサイクルを回す「人を成長させるAI」の設計思想
LLMのような「効率化」ではなく「能力向上」を狙う
レイチェルは「人を成長させるAI」というコンセプトであり、これが独自性でもあります。一般的なLLMなどは業務を楽にさせることが主眼ですが、能力が上がっているとは限りません。

それに対してレイチェルは、理解しているか、納得しているかに着眼し、行動に移して習慣化させるという、人を成長させていくことが大きな特徴です。
具体的には、何を優先すべきか、なぜ行うべきかという理由の提示、昨日の行動が良かったのかというフィードバック、および忘れそうなタスクのリマインド、これらを全体的に行うことで人の理解と行動を促進しています。

多様なハードユースケースを単一プロダクトで支える「LUDENS」の2層アーキテクチャ
画像認識・言語処理・コアアプリの3本柱で構成
土田:ここから変わりまして、私から人型AIプラットフォームのLUDENSについてお話いたします。

LUDENSは弊社で開発したプラットフォームで、大きな柱が3つあります。画像認識のAIである「VisualCortex」、自然言語処理のAIである「LanguageCortex」、およびネイティブアプリである「LudensCore」です。LudensCoreはWindows、iOS、Androidをサポートしています。
加えて、人型インターフェースであるバーチャルヒューマンエージェントと、AIの入力を元にキャラクターにどういった行動をさせるのかを定義するインタラクティブコードと呼ばれるものがあります。ユースケースとしては、ファミリーマートのような店長支援のほか、営業支援、およびサイネージによる広告や接客といった一般ユーザー向けのものもあります。

ハードとソフトを分離する「2層アーキテクチャ」の柔軟性
1つのプロダクトで複数のユースケースをサポートするために、「エンジン層」と「スクリプト層」の2層アーキテクチャを採用しています。
エンジン層はLudensCoreというプラットフォームの共通基盤で、UI基盤や通信機能、3Dキャラクターの描画、スクリプトの実行環境などを提供します。スクリプト層はユースケースごとの振る舞いやロジックを担当します。例えるとするならば、ゲーム機というハードウェアの上でゲームタイトルが動くような関係性です。このように分離することで、安定性と柔軟性を両立させています。
JavaScriptで、振る舞いを柔軟に制御するスクリプト層

アプリケーションロジックは、JavaScriptで書かれたインタラクティブコードがスクリプト層側で実現しています。画面制御やキャラクターのセリフ、データのハンドリングはすべてこのスクリプト上で行います。
画像認識に関しては、カメラに人が映った時にVisualCortexが解析します。サイネージのパターンでは、レイテンシーを抑えるためにミニPCにVisualCortexを入れてカメラと直接繋いでいます。顔の判別なども行い、正面を向いている場合にコンテンツを開始するといった判断に使っています。

発話に関しては、マイクから取り出した波形データを一度テキストに変換し、LanguageCortexに投げて意図解析を行います。「見せて」「表示して」といった多様な言い回しからユーザーが何をしてほしいのかを解析し、チャットボット機能で返答文を生成します。キャラクターがどう喋り、どう動くかの最終的な制御はインタラクティブコードに任されています。

レイチェルは対話によって行動を制御するAIであり、それを実現するプラットフォームとしてLUDENSが構成されているのです。
「AIの不確実性」を制御する運用の裏側
「仕事ができる人のノウハウ」をシステムへ実装
ここからは質疑応答に移ります。
質問者:データ分析とモデル化などはどのような仕組みになっているのでしょうか。
石井:公開できる範囲でお答えすると、大規模データを連携し、「優秀な人」の行動をベースに分析してアルゴリズム化しています。つまり、人のノウハウをそのままレイチェルが模倣する仕組みです。

「事実と予測」の動的判別
質問者:レイチェルへの質疑応答についてです。実際の業務では事実の相談だけではなく予測などもあると思うのですが、どのようにつくり込んでいるのでしょうか。
石井:実際の業務での質疑応答に関しては、事実のデータか予想かを内部的に切り分けています。人間のように実際のデータを参照して回答する状態と、柔軟に予想する状態、こちらをプラットフォーム側で独自に切り替えています。
以上です。ご清聴ありがとうございました。

アーカイブ動画・発表資料
イベント本編は、アーカイブ動画を公開しています。また、当日の発表資料も掲載しています。あわせてご覧ください。
▼動画・資料はこちら
アーキテクチャConference 2025
※動画の視聴にはFindyへのログインが必要です。






