【アーキテクチャConference 2025】1年後にも使えるAIサービスアーキテクチャ
2025年11月20日・11月21日に、ファインディ株式会社が主催するイベント「アーキテクチャConference 2025」が、ベルサール羽田空港にて開催されました。
AI活用には、単なる技術選定にとどまらず、「AIにできないことを定義する」「ドメイン知識を資産化する」「既存業務を100%置き換える」といった、変化の激しいAI時代を生き抜くための本質的な設計思想が必要だと、株式会社renue 代表取締役の山本悠介氏は語ります。本セッションでは、実際に土木現場の工数を75%削減した成功事例にも触れながら、1年後も色あせない持続可能なアーキテクチャの正体を語っていただきました。
AI大手の進化によるシステムの陳腐化や、画面を増やしてもユーザーに使われない――。エンジニアやプロダクトマネージャーとして、そんなAIプロダクト開発における大きな壁に直面する方は、ぜひご覧ください。
■プロフィール
山本 悠介
株式会社renue
代表取締役
京都大学工学部を中退、東京大学文学部言語文化学科を卒業。新卒ではアクセンチュア株式会社にて主に証券会社へのシステム提案・データ分析を行うコンサルタントとして従事。その後、株式会社ジラフにてCMOとして複数プロダクトの責任者を担当。フリーランスコンサルタントとして活動後、2021年に株式会社renueを設立。
マーケティングを含めたアジャイルなプロダクト開発を得意とする。コーディングからユーザーテストまでを実行し、お客様のITサービスが売上を立てるまでを担当する。
株式会社renue - コンサル×エンジニアの垣根を越えた開発
株式会社renue代表取締役の山本と申します。本日は、移り変わりが非常に速いAIという領域の中で、どうすれば長く使えるサービスアーキテクチャを構築できるのか、弊社の受託開発事業を通じて見えてきた知見をお話しします。
弊社の事業は、グローバルや先端領域などの変化が速く、人材調達が難しい分野にコミットしています。AIに関するPoCや研究、組織導入のコンサルティング、人材派遣まで幅広く行っています。その中で弊社の大きな特徴だと言えるのは、コンサルタントもコードを書き、エンジニアも会議運営を行うなど、職種の垣根がない点です。確実な設計で時間をかけるよりも、少人数でクイックに何でも対応できるような体制を強みとしています。
次に育成方針についてお話しします。弊社では、AIを使いこなすだけでなく、AIを使ってスキルを上げ、AIにはない人間としての魅力を磨く人材を教育しています。経営方針もGitHubのリポジトリで管理し、社員が代表である私へプルリクエストを送れる体制にしています。また社内の議事録や日報などのデータを集約し、AIの補佐を得ながら全員のキャリアプランを描くシステムも内製しています。

生成AIの実践的な活用事例- AIレガシーマイグレーションから記事自動生成まで
具体的な事例として、生成AIを用いたレガシーマイグレーションがあります。コンパイラが存在しないような古いシステムに対し、AIが自動で修正をかけ続け、仕様書の作成からJavaなどのモダンな言語への書き換えまで行い、インアウトが一致するまで繰り返す仕組みを構築しました。

他にもプロと遜色ない品質のWeb記事を完全自動で生成するシステムや、マルチエージェントにFAQを引用させて精度を上げる工夫、商社とのサプライチェーン構築などの実績があります。

1年後も生き残るための設計戦略
アップデートを前提としたシステムアーキテクチャに
ここから本題である、1年後も生き残るための設計戦略についてお話しします。昨今のAI業界の課題は、GoogleのGeminiやOpenAIのChatGPT Searchなど、大手の進歩が速すぎて中途半端なシステムはすぐに吸収されてしまうということです。
また新規で画面を増やすと、ユーザーは習熟コストを嫌って使わなくなってしまう可能性もあります。そのため、「業務選定を間違えない」「画面を増やさない」「ドメイン知識を溜める」「小さく始める」といった対策が重要です。つまり、アップデートを前提としたシステムアーキテクチャにすることが肝要だということです。
徹底的な「単純化」で、AIアプリ普及へ
アーキテクチャの定義として、ユーザーと対話するプレゼンテーション層、タスクを割り振るアプリケーション層、ドメイン知識が詰まったドメイン層、そしてインテグレーション層やプラットフォーム層に分けて考えます。

例えばプレゼンテーション層では、とにかく画面や操作を増やさないことが大事です。既存の業務フローを無理に分けるのではなく、小さなスコープで100%置き換えるか、SlackのようなスーパーアプリにAIを乗せる方法が有効です。

「変化」を前提に、ドメイン知識と共通基盤を切り離す
開発手法においては、ビジネスロジックとそれ以外を切り分ける構成が有効です。初期のPoCフェーズでは作り込まずにスピードを優先し、本番導入後は自動アップデートがかかるようにドメイン知識を切り離します。サービスが安定してきたら、トランザクション処理やネットワーク関連などのバックエンド基盤を切り出して保守運用していくのが良いでしょう。

PoCの目的は「AIが原理上できないこと」の特定
PoCで重要なのは「AIに今できること」を確認することではありません。AIは日々進化するため、むしろ「AIが原理上できないこと」を探ることで、人間がやるべき面白いアイデアの創出や監査などの役割が見えてきます。5年後、10年後を見据えた組織設計に合わせたアーキテクチャが必要です。

ログ解析による「ドメイン知識の自動アップデート」
AIがどれだけ賢くなっても、特定の会社のドメイン知識は別途入れる必要があります。プロンプトに変数を埋め込み、管理者が追跡できるようにRDBやJSONで管理したり、ログデータをAIに解析させてドメイン知識を自動更新したりする仕組みが有効です。

AI活用における、各層の重要ポイント

プレゼンテーション層はデザインをシンプルに保ち、ユーザーが何も考えずに操作できるようにします。会話・オーケストレーションは自作せず、OpenAIやGoogleが提供するSDKを活用するのが最善です。アプリケーション層はビジネスロジックを正しく動かすために重要です。ドメイン層は、システムを人間に合わせるためにノウハウを蓄積させる場所とします。
インテグレーション層は土台としてしっかり作るべきですが、データ自体の成形はAIが得意とするため、きれいにするよりも集約することに注力すべきです。またプラットフォーム層については、圧倒的なコストと進化の速さを考慮すると、大手のクラウドサービスに追従するのが得策です。

Azureでの設計例としては、フロントエンドとバックエンドを分離し、VNET統合でネットワークを閉じるといった構成で十分に機能します。
【工数75%削減を実現】土木現場の「手書きメモ」をAIで完全リプレイス
成功事例として、土木業界のお客様との取り組みをご紹介します。
平面図から数値を拾って電子化する作業をAIで自動化した事例では、まずStreamlitでクイックに検証し、現場のベテラン社員から出たアイデアを取り入れながら案件を膨らませていきました。

現場では、手書きメモを後でPC入力するという二度手間が発生していましたが、スマートフォンでの音声入力に置き換えることで操作ステップを減らし、結果としてデータが集まりやすくなりました。

精度の問題については、AIのアーキテクチャ工夫やモデルの進化を待つ姿勢で、焦らずに取り組むことが重要です。

このようなツールを使った結果、私も驚くほどの大幅な工数削減が実現しました。見積書作成なども、画面を増やすのではなく既存業務を完全に置き換える設計にしたことで、業務時間は3分の1以下に短縮(75%削減)約75%の工数が削減されました。

ただ現状、課題も残っています。数量拾いの精度については今後も改善を続け、さらにメンバーが活用しやすいアプリへと進化させていくつもりです。こういった精度向上に向けては、大手のツールの活用で解決する部分も多いため、焦らずに取り組んでいけば十分ではないかと考えております。
以上です。本日はご清聴いただき、ありがとうございました。

アーカイブ動画・発表資料
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アーキテクチャConference 2025
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