Hacobuのマルチプロダクト インフラアーキテクチャ
アーキテクチャの工夫ポイント
株式会社Hacobuは、物流領域に特化したクラウド型SaaS「MOVO(ムーボ)」シリーズを展開しています。トラック予約受付サービス「MOVO Berth」、動態管理サービス「MOVO Fleet」、配車受発注・管理サービス「MOVO Vista」など、複数のプロダクトを通じて物流現場の効率化を支援しています。私たちPlatformチームは、それら複数プロダクトを下支えする共通基盤の開発・運用を担っています。
現在のインフラアーキテクチャ設計の工夫
Hacobuのインフラは「共通化」と「分離」のバランスを取りながら設計されています。共通化は主に複数プロダクトで横断的に使われる機能を対象とし、逆にプロダクトごとに独立性を保ちたい部分や、障害の影響を限定したい部分は分離しています。
共通化されている部分としては、認証・ユーザ基盤や共通マスタデータ、通知サービスなどがあります。これらは全プロダクトで同じ仕組みを使えるよう、Platformチームが一元管理しています。また、EKS・Istio・Argo CDといったKubernetes基盤も共通化することで、運用効率を高め、プロダクトが増えても安定してスケールできる仕組みを実現しています。さらに、開発時によく利用される便利な機能をまとめた共通ライブラリを整備し、重複実装を避けつつ開発体験を向上させています。
一方で、DBやS3などのデータストアはプロダクトごとに専用のリソースを持ち、データの独立性を確保しています。サービス間通信についても、Istioを利用して認証を必須化することで、不要な相互通信を防ぎ、セキュアなプロダクト間通信を実現しています。また、CI/CDについては共通化せず、各プロダクトチームの裁量に任せています。これは、プロダクトごとに異なる開発体制やリリースサイクルがあり、自由度を確保することが俊敏な開発につながると考えているためです。ただし、Kubernetesへのデプロイに関してはGitOpsを基盤として共通化しており、Argo CDを利用することで一貫性を担保しています。
共通基盤を活かしつつ各プロダクトの生産性を高めるために、Platformチームではさまざまな工夫を行っています。Datadogを活用してログやメトリクスを横断的に収集し、プロダクトを跨いだ統一的な監視を実現しています。TerraformはAtlantis経由で扱えるようにし、プロダクトエンジニアも安全にplan/applyできる仕組みを整えました。また、Argo CDによるGitOps運用を導入し、Kubernetesへのデプロイを標準化をしています。さらに、Platformチームとプロダクトチームの定例を月に一度設け、課題やベストプラクティスを共有することで、共通基盤を継続的に改善しています。
今後の展望
今後は「開発者体験のさらなる改善」を軸に、各プロダクトチームがより自律的に動けるよう、自動化やセルフサービス化を進めていきます。たとえば新規プロダクトの構築やモニタリング設定など、これまでPlatformチームが担っていた作業をセルフサービス化することで、プロダクトチームの開発スピードを一層高めたいと考えています。
また、コストの可視化にも取り組みます。各プロダクトが自分たちのインフラやオブザーバビリティの利用コストを簡単に把握できる仕組みを整備し、より健全で持続可能なサービス運用を実現することを目指しています。
さらに、ユーザーに安心してサービスを利用していただけるよう、セキュリティ面の強化にも注力します。共通基盤の信頼性強化やインフラのセキュリティ改善を継続的に進め、信頼性の高いプラットフォームを提供していきます。
◆執筆:
栗山 聖 テクノロジー本部 CTO室 プロダクト基盤部 @sheepland
アーキテクチャを構成するツール

統合監視プラットフォーム
Datadog

DWH
BigQuery

ネットワーク境界防御
Amazon CloudFront

コンテナ
Amazon EKS Cloud

NoSQL-Key-Value Stores
Amazon ElastiCache

RDBMS
Amazon Aurora

データレイク
Amazon S3

データストリーミング
Amazon Simple Queue Service

アプリ・API防御
AWS WAF

NoSQL‑Search Engines
Amazon OpenSearch Service

アプリ・API防御
Kong

CI/CD
ArgoCD

NoSQL-Document Databases
Amazon DynamoDB

コンテナ
Kubernetes

ログ監視
Fluent Bit
会社情報

株式会社Hacobu
従業員規模 101名〜300名
クラウド物流管理ソリューション「MOVO」や物流DXコンサルティング「Hacobu Strategy」を通じて、「運ぶ」を最適化しています。MOVOシリーズでは「トラックの入出庫をコントロールできない問題」「トラックの位置情報を把握できない問題」「煩雑なトラック手配の問題」などを解決するシステムを提供しています。
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